研究課題
我々はこれまで、生体内に存在する求核性の高い「活性イオウ種」が、活性酸素や環境汚染物質などの親電子性の高い化合物(親電子物質)を適切に解毒・排泄する重要なシステムとして働くことを明らかにしてきた。本研究では、①活性イオウ種の分子実体の解明、②活性イオウ種の生成・代謝制御機構、③心筋の生理機能との関連、に着目した検討を行った。まず、ポリ硫黄鎖を検出できる蛍光指示薬(SSP)やTag-switch-Tag法を用いて細胞内ポリ硫黄の測定を行ったところ、レドックス感受性の高いシグナルタンパク質に含まれるシステインポリ硫黄鎖が活性イオウ種の分子実体であること、および親電子物質によるポリ硫黄鎖の枯渇がタンパク質の不可逆的な酸化的翻訳後修飾や多量体化を誘発することで、マウス・ラット心筋細胞のミトコンドリア過剰分裂や細胞老化を誘導しうることを見出した。また、タンパク質にシステインパースルフィドを供給する酵素がシステインtRNA合成酵素(CARS2)であることも新たに見出した。CARS2をノックダウンあるいは過剰発現させたラット新生児心筋細胞を用いてCa2+ハンドリングを調べたところ、脱分極誘発性のCa2+スパークの形や大きさに異常は見当たらなかった。ところが、CARS2欠損細胞においてミトコンドリア分裂促進Gタンパク質dynamin-related protein 1 (Drp1)の活性が有意に上昇しており、この細胞にシステインパースルフィド生成活性のみ保持したCARS2変異体(tRNA合成酵素活性欠損)を発現させることで、増加していたDrp1活性が完全に低下することを確認した。以上の結果から、細胞内の活性イオウ種は、心筋において、ミトコンドリア分裂タンパク質などの安定性や酵素活性を負に調節する役割を担うことが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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