研究課題
しびれモデルとして、抗がん剤オキサリプラチンによる急性末梢神経障害モデルを用いて、C線維特異的に発現するTRPA1の役割、特に長年議論の的となってきた冷感受性について解析した。その結果、通常は冷感受性を示さないヒトTRPA1が、オキサリプラチン、プロリン水酸化酵素阻害薬あるいはTRPA1 Pro394の変異により、冷刺激(25℃→16℃)に対して感受性を示すことを見出した。この応答は、冷刺激によりミトコンドリアで産生された活性酸素種を過敏化したTRPA1が感受するという間接的な経路であり、ヒトTRPA1の冷感受性の分子機構について明らかにすることができた。新たなしびれ病態動物モデルとして、大腿動脈結紮による慢性後肢虚血モデル、ストレプトゾトシンによる糖尿病性神経障害モデル、オキサリプラチン長期反復投与による抗がん剤誘発末梢神経障害モデルを作製し、いずれも後肢の血流量が低下すること、冷過敏応答や間欠跛行様行動がTRPA1遺伝子欠損マウスで消失すること、また、TRPA1アゴニスト足底内投与による疼痛様行動が増強されること、血管拡張薬の投与によりこれらの疼痛様行動が改善されることを明らかにした。一方、これらのモデルでの感覚神経の自発活動を、in vivoでの細胞外記録、アデノ随伴ウイルスによるGCaMP6の遺伝子導入、単離後根神経節細胞を用いたCaイメージングなどにより検出しようと試みたが、いずれも困難であった。細胞膜非透過性の局所麻酔薬QX-314と神経線維特異的な刺激薬を用いた神経線維サブタイプ特異的麻酔技術を再現することができた。また、ブラシによるstrokingを感知するとされるMRGPRB4陽性感覚神経をトランスジェニックマウスにより可視化し、Caイメージングを行ったところ、多くのMRGPRB4陽性神経がTRPA1アゴニストに感受性を示すC線維であることを明らかにした。
Nat Commun 7: 12840 (2016):マスコミ報道(京都新聞9月16日25面、産経新聞9月21日23面、朝日新聞10月13日19面 他)Sci Rep 6: 23261 (2016):マスコミ報道(京都新聞3月18日25面、産経新聞3月18日夕刊 10面、毎日新聞3月26日30面に掲載、共同通信社、J-CASTニュース他)
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