研究課題
本年度は、ヒト由来iPS細胞からのニューロンへの分化誘導について検討を行った。まずiPS細胞から神経幹細胞への分化を行い、フィーダー細胞を必要としない神経幹細胞へと分化させた。これらをストックし、増殖させることで継代可能なiPS細胞由来神経幹細胞とした。この細胞にAβや酸化ストレスをはじめとする各種細胞毒を添加することにより細胞死を誘導したが、ラット初代培養大脳皮質ニューロンと比較して各種神経毒に対する感受性は低かった。続いて、これらの神経毒によって惹起されるiPS由来神経幹細胞におけるタンパク発現量の変化を2次元電気泳動を用いたプロファイリングによって検出を試みた。まず、代表的な酸化ストレスとして過酸化水素を処置した後、細胞を回収しそのタンパク発現量の変化を検討した。過酸化水素処置により2次元電気泳動像は変化を起こし、そのパターンは酸化ストレスの代表例としてストックした。Aβを含めた他の神経毒によるタンパク発現量の変化についても今後蓄積を行う予定である。さらに、昨年度の成果を受け、ニューロンとアストロサイトの相互作用により発現変化するタンパク性の機能分子の同定を進めた。ラット由来アストロサイトをニューロンと混合培養した後、アストロサイトのみを分離したものとアストロサイトのみで培養したものの両者からタンパク質を回収しその発現量の差異をマイクロアレイ解析により行った。その結果ケモカイン類の発現量が変化していた。さらにこれらのケモカイン類をニューロンのみの培養に添加することによりニューロンのグルタミン酸毒性に対する感受性を低下させた。以上の結果より、アストロサイトはニューロンとの接触によりケモカイン類の産生を増加させ、ニューロンに対して保護作用を有することが示唆された。
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