研究課題/領域番号 |
15K14983
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
國安 明彦 崇城大学, 薬学部, 教授 (90241348)
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研究分担者 |
村田 和義 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (20311201)
牧瀬 正樹 崇城大学, 薬学部, 准教授 (80433001)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
アポトーシス耐性がんや難治性がんの新規治療法として「ネクローシス誘導」が提唱されている。しかし、腫瘍細胞選択的にネクローシスを誘導する化合物は、現在のところ見つかっておらず、本アプローチによる治療戦略の開発は進んでいない。本研究では、ネクローシス誘導配列とファージディスプレイ法で取得した細胞選択的膜透過ペプチド配列を連結させることにより、様々ながん細胞に対応する細胞選択的ネクローシス誘導化合物の創製を行い、新がん治療戦略の開発にむすびつける。 初年度に肺がん細胞選択的に結合するペプチドリガンドの同定を試みたが獲得には至らなかった。そこで、我々が先にファージディスプレイ法で同定した細胞選択的ペプチドリガンドを見直した結果、白血病細胞結合ペプチドの一つが肺がん細胞株に対しても強く結合することを確認した。すなわち、肺がん細胞では血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体のパートナー分子ニューロピリン-1(NRP-1)が高発現しているという知見を基に、先に我々が見出したNRP-1結合ペプチドの肺がん細胞株(A549など)への結合をファージ結合実験で調べた結果、本ペプチドは強く結合することがわかった。次に、本ペプチドをネクローシス誘導配列D(KLAKKLAK)2に連結させたペプチド化合物をペプチド合成機により調製し、種々の細胞株を用いて細胞死誘導活性を調べた。WST-8試薬による比色定量法で評価した結果、種々の肺がん細胞株に対して細胞死が誘導されることを観察した。 さらに、本ペプチドが肺がん細胞株に誘導する細胞死について細胞染色および電子顕微鏡解析を用いて詳細に解析した結果、ネクローシスであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年4月発生の熊本地震によりペプチド合成装置、MALDI-TOF質量分析装置が被害を受けた。このため、本研究で中心的な役割を担うペプチドの調製ができず、研究が大幅に遅延したため期間延長を行った。現在、本研究遂行に必要な機器が回復したので、本年度は昨年度計画の研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
ニューロピリン1結合ペプチドが肺がん細胞株に結合することがわかり、D(KLAKKLAK)2配列と連結させたペプチド化合物がネクローシスを誘導することを見出した。 本年度は、昨年度の地震の影響によりペプチド合成ができずに進めることのできなかった細胞選択的ネクローシス誘導ペプチドミメティク化合物を合成する。それぞれのペプチドについて、D体アミノ酸置換もしくは環状化のためのCys導入を行った新規配列を設計する。得られたペプチドの安定性と分解性等を調べ、白血病細胞株で細胞死誘導活性を評価した後、ヒト白血病細胞異種移植モデルを使った抗腫瘍効果の評価を行う。また、本ペプチドが肺がん細胞株に細胞死誘導した際に炎症反応が惹起されるかマクロファージの活性化を指標に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月発生の熊本地震により、自動ペプチド合成装置、HPLC及び超純水作成装置、MALDI-TOF質量分析装置が被害を受けた。研究環境の復旧に2ヶ月を要し、本研究で用いるペプチド化合物の調製ができず、研究が大幅に遅延したため期間延長を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、本研究で用いる機器は回復している。よって、昨年度繰り越した予算を用いて昨年度計画で完了できなかった研究を行う。
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