研究課題/領域番号 |
15K14985
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
池本 光志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (50356424)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNAアプタマー / G蛋白質受容体 / オピオイド受容体 / 鎮痛効果 / 新規核酸アプタマー探索法 / モルヒネ |
研究実績の概要 |
本研究は、G蛋白質共役型受容体に結合する核酸リガンドの探索同定を行うために開発した新規探索法の高感度化を実現し、本探索法を用いたモルヒネ鎮痛効果を凌駕する高親和性核酸リガンドの創製と分子作用機序の解明を目的として実施する。本年度は、第1段階として、新規探索法のプロトタイプの高感度化を実現するため、探索方法の至適化条件の決定、本探索法の基盤原理に関する実験的検証を進めた。本探索法の至適条件を決定後、同至適条件で調整した細胞外分泌膜小胞を免疫電顕法により解析した結果、過剰発現させたMOR受容体を内包する細胞外分泌膜小胞の存在とその生化学的および形態学的特性を明らかにすることに成功し、当該探索法が基盤原理に基づいて機能することを実験的に確認した。また、至適化条件検討の過程で、物理化学的特性を保持したインタクトな細胞外分泌膜小胞の新規精製法の開発に至り、特許出願準備中である。第2段階として、トラサイクリン依存性にMOR受容体を発現誘導可能な293細胞株を用い、40 塩基の任意配列を含む全長76塩基の合成一本鎖DNAラブラリーからMOR受容体結合DNAリガンドの同定を本探索法により試みた。その結果、本探索法を用いた3回のセレクションにより、CEll SELEX法による24回のセレクションにより取得した高親和性MOR受容体結合DNAリガンド(Apt-MOR)ならびに新規DNAリガンドの同定に成功し、本探索法の有用性を実証した。またApt-MORがモルヒネと同程度のcAMP抑制効果を有することを細胞培養系にて明らかにした。第3段階として、Apt-MORの高機能化に取り組み、リガンド特性を維持する最小ループ構造を明らかにした。また、昆虫細胞発現系に至適化したDNAコドンを有するMOR受容体発現ベクターを構築し、Apt-MOR1/MOR受容体複合体の立体構造解析のための準備を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、概ね当初の研究計画通りに順調に進展したが、高機能化DNAリガンド(Apt-MOR)の鎮痛効果に関する行動薬理学的解析を行うには至らなかった。これは、新規探索法の至適化条件検討実験が、物理化学的特性を保持したインタクトな細胞外分泌膜小胞の新規精製法の開発と当該精製法の特許出願に発展したためである。本成果は、当初全く予定していなかったものであったが、新規探索法の問題点の把握や技術改良、さらには次世代型探索技術開発等に繋がるものであり、次年度の開発研究を効率的に進展させる上で重要なものとして位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、前年度に引き続いて、新規探索法の改良(次世代シークエンサーを用いた網羅的核酸リガンド配列プロファイリング技術解析の開発)とApt-MORの高機能化(安定性向上)を実施する。また、新たに挑戦的課題として位置付けている2課題、① Apt-MORの薬理作用の解析、② Apt-MOR/MOR受容体分子複合体の立体構造解析を推進する。具体的には、課題①に関しては、中枢神経系の痛み制御領域(中脳灰白質等)にApt-MORを脳内微量投与することによって鎮痛作用をホットプレート法やテイルクリック法を用いた行動薬理学的指標により解析すると共に、養細胞系にてモルヒネ等の代表的MOR受容体アゴニストとApt-MORの薬理作用(cAMP応答性等)を培比較検討することにより、Apt-MORの薬理学特性を解明する。一方、課題②に関しては、既報に準じてsf9昆虫細胞系を活用したMOR受容体強制発現系を構築し、可溶化MOR受容体を用いたApt-MOR/MOR受容体分子複合体の分子間相互作用をNMR構造解析法等により解析し、Apt-MORのMOR受容体結合部位とその分子相互作用機構を明らかにする。尚、NMR立体構造解析の専門家である連携研究者の協力の下で調整したApt-MOR/MOR受容体分子複合体の立体構造解析を進める。
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