研究課題/領域番号 |
15K14990
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
今井 康之 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80160034)
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研究分担者 |
黒羽子 孝太 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90333525)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境衛生学 / アレルギー・ぜんそく / 免疫学 / 薬学 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
化学物質によるTRPA1作動活性と、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)をハプテンとしたマウス接触性皮膚炎における接触感作促進作用(アジュバント作用)を並行して測定し、TRPA1作動活性からアジュバント作用の予測が可能かどうかを調べた。検索する化学物質は、フタル酸エステル類との化学構造の類似性や相違、用途の共通性に基づいて選んだ。TRPA1作動活性の測定法としては、TRPA1を強制発現させたCHO細胞に細胞内カルシウムイオン濃度に依存して蛍光を発する蛍光プローブFluo-4を導入した。多検体蛍光検出装置を用い、検体を加えた後の細胞内Ca2+濃度の時間変化を自動測定した。代替可塑剤の一つであるアジピン酸ジイソプロピル(DIA)は、TRPA1作動活性を示し(EC50 = 37μM)で、TRPA1選択的アンタゴニストのHC-030031で阻害された。DIAは、FITC誘導マウス接触性皮膚炎モデルでアジュバント作用を示し、さらにFITCを抗原提示した樹状細胞の移動促進作用を示した。アジュバント作用は、HC-030031の腹腔内投与で低下した。フタル酸ジブチル(DBP)の構造の一部を共有するマレイン酸ジブチル(DBM)も、FITC誘導マウス接触性皮膚炎モデルでアジュバント作用を示し、さらにFITCを抗原提示した樹状細胞の移動促進作用を示した。TRPA1作動活性については精査中である。腸内細菌の産物から作られうる短鎖脂肪酸を含む脂質として、人工脂質のトリブチリンがあげられる。DBPとの類似性からするとジグリセリドが望ましい。しかしジグリセリドは不斉炭素を含むため、天然型の(S)ジブチリンおよび非天然型の(R)ジブチリンを化学合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
防腐剤のパラベン(芳香族モノカルボン酸エステル)については、TRPA1作動活性およびアジュバント作用について、再現性の確認をすすめている。ところでフタル酸エステルやアジピン酸エステルは、ジカルボン酸のアルコールエステルである。エステルの向きが逆のジグリセリドについて検討をすすめる準備として、ジブチリンの光学異性体をそれぞれ合成した点は、当初の計画を上回った進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
防腐剤として使われている芳香族カルボン酸モノエステルのパラベンについて、TRPA1作動活性とアジュバント作用を並行して調べる。化粧品に汎用されるブチルパラベンおよびエチルパラベンを具体的な対象とする。DIA以外の代替可塑剤として、セバシン酸ジイソプロピル(DIS)の作用を検討する。トリブチリンおよび天然型のS-ジブチリンおよび非天然型のR-ジブチリンを比較検討する。TRPA1以外の侵害刺激受容体(例えばTRPV1)を介した知覚神経刺激がアジュバント作用を媒介する可能性を調べる。コショウ由来のアルカロイドである Piperine やコショウ科コショウ属 (Piper)の植物由来の抽出物を用いる。一方で、これらのTRPV1作動物質がFITCをハプテンとした接触感作において、アジュバント作用および樹状細胞の移動促進作用を示すかどうかを調べる。DBPのアジュバント作用の機構の一つとして、ヘルパーT細胞をIL-4産生型のTh2に分極化させることが提唱されている。他の被検化学物質も同様の作用機構に基づくかどうかを調べるため、FITCとともに被検化学物質を皮膚に塗布したのち、所属リンパ節からのIL-4とIFN-γ産生を比較検討してヘルパーT細胞分極化への影響を調べる。
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