研究実績の概要 |
環境中の化学物質で、他のアレルゲンの感作を促進する作用(アジュバント作用)を持つ物質の検索のため、知覚神経刺激との関連に着目した研究を実施した。知覚神経に発現する侵害刺激受容体の一つであるTRPA1作動活性と、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)をハプテンとしたマウス接触性皮膚炎における感作促進作用(アジュバント作用)を並行して調べた。化粧品に汎用される防腐剤パラベンのうち、ブチルパラベンには、TRPA1刺激作用とアジュバント作用の両方を認めたが、エチルパラベンはTRPA1活性化に高濃度を必要とし、アジュバント作用も認めなかった。 アジュバント物質として検討を進めてきたフタル酸エステル類、代替可塑剤のアジピン酸エステルには、ジカルボン酸のアルコールエステルとして共通点がある。逆に多価アルコールの脂肪酸ジエステルの作用を調べるため、ジアシルグリセロールの一種であるジブチリンについて検討した。ジアシルグリセロールは、生理活性のある物質として良く知られている。天然型のS-ジブチリン (1,2-ジブチル-sn-グリセロール)、非天然型のR-ジブチリンを光学活性体として合成した。比較にトリアシルグリセロールのトリブチリンを用いた。予想外に、トリブチリンに最も強いTRPA1活性化作用およびアジュバント作用を認めた。一方、天然型、非天然型ジブチリンとも、TRPA1活性化には高濃度を必要とし、アジュバント作用も認められなかった。 知覚神経には、TRPA1以外の侵害刺激受容体としてTRPV1の発現が知られている。コショウ科植物のアルカロイドであるピペリンのTRPV1アゴニスト活性を確認し、アジュバント作用を見出した。さらに、タイ国の伝承処方に含まれるコショウ科植物のPiper Chaba Hunt.の種子抽出物に、TRPV1活性化作用およびアジュバント作用を発見した。
|