HLA-B5701およびB5703のトランスジェニックマウス(B5701-Tg、B5703-Tg)に対し、アバカビル(ABC)を用いた局所リンパ節アッセイ(LLNA) を行った。その結果、B5701-Tgで有意に高いリンパ節重量増加、ならびに細胞増殖マーカーであるBrdU取り込みを認めた。また、これらTgマウス新生児より単離分化したケラチノサイト(KC)に対しABCを曝露すると、12時間前後でB5701-Tgでのみ IL-1βとIFNγなどの炎症性サイトカインmRNA上昇、KC活性化マーカーであるKRT10、KRT16の上昇が見られた。このときLDH漏出はほとんど見られず、細胞毒性は起こっていないことも確認された。ABCによってB5701-Tg由来のKCが特異的に活性化し、炎症性サイトカイン誘導が起こったと思われた。さらに興味深いことに、ABC曝露によりHLA蛋白質の細胞表面発現量がB5701-Tgでのみ有意に上昇した。一連の反応はABCと同じ核酸アナログに分類されるジドブジンやアシクロビルの曝露では見られなかったことから、これらはABC特異的な反応と考えられた。ヒト皮膚由来の不死化KCであるHacat細胞、ならびに子宮頸癌細胞であるHelaでは、HLA-B5701を一過性発現させてABCを曝露しても上記のような炎症性サイトカイン誘導もHLA表面発現量の増加も認められなかった。詳細なメカニズムは不明なものの、ここで見られた現象は、T細胞受容体での受容を介さずにKCレベルでABC特異的かつHLA-B5701特異的な炎症反応が起こるという新規なメカニズム提唱に繋がるもので、HLA-B5701多型保有者に生じる皮膚特異的反応の背景メカニズムを説明する上で重要な知見である。
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