コレステロールの消化管吸収は、肝臓での生合成と並んで体内のコレステロールレベルを制御する重要なプロセスである。これまでに、消化管の間腔側膜に発現するNPC1L1がコレステロール吸収担体として機能していることは明らかとなっているが、その活性(または発現量)制御因子や、取り込まれたコレステロールをリンパ管へと排出する因子は未解明のままである。このような背景の中、申請者は、マウス亜系間でコレステロールの消化管吸収量が大きく異なることを見出した。本研究では、この吸収効率の違いを説明しうる因子を探索・同定することで、新規の消化管コレステロール吸収制御因子を見出すことを目的としている。 昨年度(平成27年度)までに、マウス亜系間での消化管コレステロール吸収量の違いは、NPC1L1の発現量の違いが原因でないことが示唆された。そこで、本年度(平成28年度)はプロテオーム解析による新規コレステロール吸収制御因子の探索を試みた。具体的には、①各マウスから採取した小腸上皮細胞の可溶化液を用いて、2次元泳動と組み合わせたショットガンプロテオミクスを行い、マウス亜系間で発現量の異なる蛋白質の探索を行った。また、②NPC1L1抗体を用いた免疫沈降実験とショットガンプロテオミクスを組み合わせることにより、NPC1L1と相互作用する蛋白質の探索を行った。これら網羅的解析の結果、これまでに複数の候補分子を見出すことに成功し、各候補分子を発現するプラスミドベクターを構築することができた。得られた発現ベクターを培養細胞に導入し、ウェスタンブロットを行った結果、期待される分子量のバンドを検出することに成功した。現在、各候補分子がコレステロール吸収に及ぼす影響やNPC1L1の機能・細胞内局在に与える影響について解析を進めている。
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