研究実績の概要 |
本研究では発症頻度が低いが重篤な薬物性肝障害の「発症の個体差」の原因を明らかにすることを目的としている。研究代表者がこれまでに確立した抗てんかん薬であるカルバマゼピンの経口投与によって、Balb/cマウスおよびWisterラットの重篤な肝障害モデルを確立した。遺伝子背景が均一なinbredマウスにおいても発症頻度に大きな個体差が再現良く認められることから、このモデルマウスを研究対象とした。5日間の経口連投後の、1.5、3、6、24時間後の血漿を採取し、vehicleコントロール、non-、 low-、high-responder(res)に分けることができ、頻度はそれぞれ約20%, 40%, 20%であった。Low-およびhigh-responderでは、ALT値がそれぞれ1,000-4,000と、10,000-60,000であった。それぞれのマウス血中の、カルバマゼピンおよび複数の代謝物を定量分析し、ALT値に関わらず、反応性代謝物生成経路を経る3位水酸化物、10,11位エポキシド代謝物及び未変化体などのいずれについても、いずれの群に属するマウスも血中濃度に有意差は認められなかった。よって、個々のマウスに於ける代謝多型が個体差の原因ではないことを明らかにした。さらに、肝障害の増悪に関与する炎症・免疫因子であるS100A8, MIP2等が有意に発現上昇し、Th17細胞系のROR gamma-tも有意に肝臓中のRNAで上昇を確認した。これらの血漿(n=5-10)を用いて、マイクロ(mi)RNAアレイ分析を行い、その解析を慎重に行った。肝臓特異的漏出miRNAであるmiR-122はALTと良い相関を示した。アレイおよび個々のmiRNAの発現結果から、miR-155-5pがhigh-resでALTの上昇よりも早期に変動するバイオマーカーの候補の一つとして見いだされた。このmiRNAの蛋白質targetの検討、さらに予測確率の上昇の為に、他のバイオマーカー候補としてのmiRNAの検討を行っている。
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