研究実績の概要 |
最終年度は、前年度確立した小腸特異的タンパク質であるglycoprotein A33を用いた小腸由来miRNAの分離法を用いたmiRNAをバイオマーカーとする小腸BCRP機能予測法の構築を試みた。ヒトを対象とした臨床試験を計画し、被験者をあらかじめBCRPの既知の遺伝子変異である421C>A変異で送別し、BCRPの基質薬物薬物であるスルファサラジンを投与した。経時的な採決を行い、薬物血中濃度の測定・解析を行った。その結果、分離した小腸由来miRNA発現量とスルファサラジンのAUCとの間に有意な負の相関を認めた。このことは以前我々が血漿中 total miRNA発現量とスルファサラジンのAUCとの間に関連を認めなかったことと併せて考えると(Saito et al, 2013, Plos one)、臓器特異的な血中からのmiRNAの分離が臓器内における薬物トランスポーターの機能予測を行う上では非常に重要であることを示している。本研究成果は査読付論文として報告済みである(Gotanda et al., 2016, Scientific Reports)。 研究期間全体を通して、本研究の遂行により血漿中から免疫沈降法を用いて臓器特異的なexosomeを分離する手法を確立できた。近年、軽微な侵襲法として血液を利用したリキッドバイオプシーが注目を集めているが、その解析手法は発展途上であり解決すべき問題点は多い。臓器別に血中からexosomeを特異的に分離した本手法の確立は世界初であり、かつその実効性をヒトを対象とした臨床試験により確認している点も特筆すべき点であると思われる。今後は本萌芽研究により確立したexsome分離法を他の臓器のトランスポーターや代謝酵素に応用していく予定である。
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