我々は、慢性炎症性の疾患である慢性腎不全の病態の1つとして、肝臓の時計遺伝子の変容が様々な合併症に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。 正常マウスを対象に、肝臓の時計遺伝子の発現リズムを測定した結果、肝臓の時計遺伝子Albumin D-site binding protein (DBP)発現量およびDBPにより転写制御されている薬物動態関連遺伝子(Cyp3a11、Cyp26a1)の発現量に日周リズムが認められることを明らかにした。一方、慢性腎不全モデルマウスを対象に、肝臓の時計遺伝子の発現リズムを測定した結果、肝臓の時計遺伝子DBP発現量およびDBPにより転写制御されている薬物動態関連遺伝子(Cyp3a11、Cyp26a1)の発現量の日周リズムが変容していることを明らかにした。 正常マウスを対象に、血清中エキソソームを採取し、エキソソーム中のDBPの発現量に日周リズムが認められることを明らかにした。一方、慢性腎不全モデルマウスを対象に、エキソソームの時計遺伝子の発現リズムを測定した結果、エキソソームの時計遺伝子DBP発現量の日周リズムが変容していることを明らかにした。 さらにどの臓器由来のエキソソームであるかを検証するために、肝臓の特異的抗原Asialoglycoprotein receptor 1 (ASGPR1) 抗体を用いた免疫沈降法によりエキソソームを精製しエキソソーム中のDBP発現量を測定した結果、リズムの変容が認められた。肝臓由来のエキソソームにおけるDBPの発現量の日周リズムの変容は、肝臓におけるDBPの発現量の日周リズムの変容に対応していた。 以上の結果より、病態時に認められる生体リズム障害の指標となる時計遺伝子の発現リズムの変容を血中エキソソーム中のタンパク質発現量を解析することで非侵襲的リズム診断ができる可能性が示唆された。
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