研究課題
本研究では、未だ有効な治療法が確立していない急性放射線症候群に対する新規抗酸化剤の開発を目的として企図された。具体的には、我々が構築してきたアルブミン創薬技術を駆使して、①血中滞留性に富むポリチオール化ヒト血清アルブミン(HSA)と②細胞透過型のグルタチオンパーサルファイドをジスルフィド結合により融合し、細胞内外で持続的に機能するハイブリッド型抗酸化アルブミンを設計した。本ハイブリッド抗酸化剤の体内動態特性を検討したところ、当初期待していたように、ポリチオール化HSAは未処理HSAと同等の血中滞留性を有し、グルタチオンパーサルファイド部分はHSA部分から解離して臓器中に移行することが、健常及び放射線照射マウスにおいて明らかにすることができた。次に、放射線照射により作製した臓器障害マウスに対するハイブリッド抗酸化アルブミンの予防投与による臓器保護効果を検証したところ、抗酸化剤投与群では、生存率の有意な改善が示された。この効果はアスコルビン酸、N-アセチルシスティン、あるいは構成因子であるHSAやグルタチオンよりも有意に優れていた。また、これらの結果を反映して、線量減少率の程度はハイブリッド抗酸化アルブミンが最も大きかった。病理学的所見においてもハイブリッド抗酸化アルブミンによる臓器保護効果が顕著であった。ただし今回は、放射線照射後にハイブリッド抗酸化アルブミンの後投与を行い臓器保護効果を解析する検討を行うことができなかった。この点は、本製剤の適応範囲を規定する重要な課題であるため、後投与の時間を変化させながら詳細に検討する必要がある。しかしながら、ハイブリッド抗酸化アルブミンが、抗酸化及び抗アポトーシス作用を細胞内外で持続的に発揮することにより、予防的に放射線誘発臓器障害を抑制したことは放射線防護剤の開発に際し、重要な基盤データになるものと考えられる。
すべて 2017 2016
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