横紋筋融解症をはじめとする薬物性筋障害は、重症の場合、腎不全から死に至る重篤副作用である。筋芽細胞を用いたin vitro研究で、アポトーシスに至る複数の機序が検討されているが、矛盾する知見も多く、発症機序は不明である。我々は薬物性筋障害を発症した日本人患者のゲノム解析で、スタチン投与発症患者において有意に関連するHLA-DRB1型(タイプ)を発見し、初めて免疫系分子の薬物性筋障害への関与を示唆する結果を得た。本研究は、「構造の異なるスタチン薬(およびその代謝物)の当該HLAタイプへの直接結合とその強度を測定し、スタチンによる筋障害発症の分子論的機構の一端を明らかにすること」を目的とした。平成27年度~平成29年度は、発症に関連するHLA-DRB1タイプのcDNAに関して設計や条件検討を行った。即ち、ヘテロ2量体を形成する可溶性タンパク質として大量生成するため、分子の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを除いたものとした。各cDNAをクローニングし、配列を確認後、遺伝子を発現するベクターを構築した。また相互作用測定のための条件検討も併せて行った。一方、陽性対照としてアモキシシリン-クラブラン酸による重篤副作用との関連が複数報、報告されていたHLA-DRB1*15:01及び陰性対照のHLA-DRB1*01:01に関して、HLA-DRA1とのヘテロ2量体として発現できたタンパク質に関し、アモキシシリンやクラブラン酸との結合をOctet法により検討したが、明確なシグナルは得られなかった。より多くの条件に関して検討を行い、解析を遂行することが必要と考えられた。
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