研究実績の概要 |
癌の発育・進展には、腫瘍細胞の浸潤性増殖とならび、腫瘍血管新生が重要である。申請者は、数多の癌を病理組織学的に解析し、癌の転移に関する実績を重ねている。その結果、癌浸潤病巣で「毛細血管・毛細リンパ管」両者の性質を有する脈管が新生される現象を把握している (血管リンパ管新生 angio-lymphatic genesis)。本研究の目的は、「血管リンパ管新生」の機序を解明し、この脈管が小静脈・小リンパ管へと連結することで、腫瘍の血行性・リンパ行性転移を惹起することを証明する。平成29年度の研究は、主として (1) ヒト消化器癌における血管リンパ管の病理組織学的解析, (2) 三次元培養法による血管リンパ管モデルの作製と解析, (3) 個体レベル(マウスモデル)での血管リンパ管新生の解析、の2点を行った。 (1) ヒト消化器癌における血管リンパ管の病理組織学的解析:内視鏡的に切除された早期胃癌を用いて、血管マーカー (factor Ⅷ related antigen) およびリンパ管マーカー (podoplanin) の二重免疫染色を行い、癌初期浸潤と血管リンパ管の関連を組織学的に解析した。その結果、腫瘍組織内および腫瘍周囲組織内において、血管リンパ管が新たに形成されていることが証明された(論文受理・印刷中)。 (2) 三次元培養法による血管リンパ管モデルの作製と解析:リンパ管を有する三次元組織において、癌細胞の間質浸潤から新生リンパ管への脈管侵襲の特性を解明する成果を上げられた(論文投稿準備中)。 (3) 個体レベル(マウスモデル)での血管リンパ管新生の解析:マウスモデル完成・解析にいたらず、残念ながら十分な研究実績をえられなかった。
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