研究課題/領域番号 |
15K15017
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮本 達雄 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (40452627)
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研究分担者 |
柳原 啓見 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (50719474)
松浦 伸也 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (90274133)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 繊毛病 |
研究実績の概要 |
一次繊毛は、G0期の中心体を起点として細胞表面に形成される微小管性の細胞小器官であり、sonic hedgehog(Shh)やWntシグナルなどの形態形成を担う発生シグナルを受容する。繊毛形成遺伝子の先天的欠損により、多発性腎嚢胞や多指症に特徴づけられる一連の繊毛病が発症する。近年、生理的に繊毛形成を抑制して細胞周期進行を担う分子群の存在が報告されている。しかし、繊毛形成遺伝子に比べて繊毛抑制遺伝子が原因となる繊毛病の研究は大きく遅れている。13 トリソミー症候群(Patau 症候群)は脳・心奇形に加えて、繊毛病を特徴づける多発性腎嚢胞、多指症、内臓逆位を合併しており、 色体上の繊毛抑制遺伝子のコピー数増加が原因であることが示唆される。本研究では、ゲノム編集法、染色体工学、細胞生物学的解析を駆使して、13番染色体より繊毛病発症の原因遺伝子を同定することを研究目的としている。 平成28年度は、部分的な13トリソミーを示すpartial 13トリソミー症候群患者の臨床症状とトリソミー領域を比較して、繊毛病感受性領域7Mbを絞り込んだ。本領域の存在する36遺伝子から繊毛形成抑制活性をもつ遺伝子の探索をsiRNAライブラリーを用いて試みた。繊毛形成細胞にsiRNAを導入して、血清存在下でも有意な繊毛形成を示す遺伝子を探索した結果、3遺伝子が繊毛抑制効果をもつことが明らかになった。これらの結果から、13トリソミー症候群における繊毛病発症を担う分子基盤の一部が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、 13トリソミー症候群の繊毛病感受性領域7Mbを絞り込み、本領域の存在する36遺伝子から繊毛形成抑制活性をもつ遺伝子の探索を行った。その結果、繊毛病発症の候補遺伝子として3遺伝子を見いだした。この結果は、13トリソミー症候群の繊毛病発症の分子基盤の一つとして捉えることができる。 また、13トリソミー症候群患者で見られる内臓逆位における繊毛機能不全が、脊椎動物の祖先型である棘皮動物でも現れることを共著論文としてGenes to Cells誌に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、平成28年度に同定した3候補遺伝子について、患者細胞での発現量解析に加えて、gain of function解析をを行って、真の繊毛病発症遺伝子の同定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平28年度は、繊毛形成抑制能をもつ遺伝子探索を行った。当初、計上していた消耗品費よりも少ない経費で、当該年度の研究目標を到達できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、繊毛形成遺伝子の機能解析を計画している。具体的には、各遺伝子の抗体作製やゲノム編集法を用いた遺伝子発現亢進および抑制、遺伝子破壊を計画しており、これらの解析には高価な試薬購入が考えられる。平成29年度当初配分額に、平成28年度からの繰越額を加えて、これらの研究を実施する予定である。
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