研究課題
一次繊毛は、G0期の中心体を起点として細胞表面に形成される微小管性の細胞小器官であり、sonic hedgehog(Shh)やWntシグナルなどの形態形成を担う発生シグナルを受容する。繊毛形成遺伝子の先天的欠損により、多発性腎嚢胞や多指症に特徴づけられる一連の繊毛病が発症する。近年、生理的に繊毛形成を抑制して細胞周期進行を担う分子群の存在が報告されている。しかし、繊毛形成遺伝子に比べて繊毛抑制遺伝子が原因となる繊毛病の研究は大きく遅れている。13トリソミー症候群は、脳と心臓の発生異常に特徴づけられる13番染色体の重複による先天奇形症候群である。本疾患は繊毛病症状を高頻度に合併しており、新たな繊毛病のひとつであることが臨床的には示唆される。本研究では13トリソミー症候群患者細胞の免疫染色の結果、繊毛形成の低下が確認されたことから、13番染色体上の繊毛抑制遺伝子のコピー数増加が原因であることが予想された。そこで、本研究では、13トリソミー症候群の繊毛病発症を担う原因遺伝子を探索・同定することを研究目的として実施した。部分的な13トリソミーをもつpartial 13トリソミー症候群の臨床症状とアレイCGH 法で同定したトリソミー領域との相関関係を先行研究文献を収集・比較することにより、繊毛病発症感受性領域7Mbを抽出した。本領域には36遺伝子が存在していたため、各遺伝子に対して3箇所のsiRNAを設計してミニsiRNAライブラリーを構築した。網膜色素上皮細胞株hTERT-RPE1細胞に本siRNAライブラリーを導入して、血清存在下での繊毛形成率を計測した結果、小胞輸送制御因子とミトコンドリア遺伝子の2遺伝子が繊毛抑制遺伝子の候補として同定された。本研究により、13トリソミー症候群の繊毛病発症の分子機構の解明のための分子基盤が整備された。
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