研究実績の概要 |
本研究では脳の毛細血管を構成する細胞の増殖分化を制御する転写因子を標的にした血管細胞の制御技術を開発することを目的とする。そのために血管前駆細胞、血管内皮細胞、血管周皮細胞に発現する幹細胞分化制御因子Zic2, Zic3, Zic1の生理的役割と病態生理的役割をZic条件変異動物と動脈硬化モデルマウスの解析により明らかにして、血管内からこれら転写因子の活性に影響を与えるツールを開発する。平成27年度は以下の点についての研究を進めた。
1. 脳血管系におけるZicファミリー遺伝子の発現解析。げっ歯類および霊長類の脳血管由来の組織材料を用いて、定量PCR解析によりZicファミリー遺伝子の発現を比較検討した。その結果、血管内皮細胞、ペリサイトに強く発現するZicファミリーのメンバーを同定することができた。また、発生過程の個体で、免疫染色により血管の前駆細胞に発現するメンバーを同定することができた。 2. 脳血管発生を標的としたZic条件変異マウスの作成。Zic1,Zic2,Zic3について、脳血管系の発生における役割を知るために、条件変異マウス、複合変異マウスの作出を行った。このために血管に選択的に外来遺伝子を導入するトランスジェニックマウスを新たに導入した。一部について、形態学的な解析を行った。 3. 動脈硬化モデルマウスの導入と解析。動脈硬化の病態へZicファミリー遺伝子がどのように関わるのかを明らかにするために、遺伝性高脂血症モデルマウスを導入して、繁殖を行った。 4. 血管透過性Zicの開発。いくつかの血管透過性構造を付加した人工Zicタンパク質のデザインを行った。
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