スクリーニングに用いるレポーターマウスの乳腺上皮細胞(MEC)を不死化させたことでprimary細胞の回収作業を経ずに大量のレポーター細胞を用意することができるようになった。これによりスクリーニング作業が高効率化した。しかしながら、当初期待していた文献情報や各種データベースから選別された脱分化誘導候補遺伝子115個は脱分化能力の活性が無いことが明らかとなった。そこで、non-coding RNAのような遺伝子を含むより大きな遺伝子セットを評価の対象にすることのできるトラップ法によるスクリーニングを考案した。これはトランスポゾンのもつ任意のDNA断片をゲノムにランダムに挿入するという性質を利用したもので、in silico解析からは認証されない遺伝子を含む遺伝子セットを、ライブラリーの作製を経ず、毎回異なるレパートリーで大量に発現させ評価できる点で極めて有用であると考えられた。開発したベクターをレポーター細胞に導入してスクリーニングを行ったところ、陽性クローンが4つ得られた。さらに1クローンから候補遺伝子を同定することに成功した。この遺伝子は幹細胞化の報告が無く、さらに解析を進めている。また、幹細胞化遺伝子スクリーニングに用いるベクターの開発の他にも以下のようなトランスポゾンベクター系を構築した①プロモータートラップ法によるレポーター細胞作製技術、②転写因子によって誘導される遺伝子の同定技術、③幹細胞など遺伝子導入が困難な細胞に対する過剰発現技術、④蛍光蛋白質融合による局在マーカーの同定技術、⑤蛍光蛋白質再構成法による結合因子探索技術、⑥マウスでの遺伝子導入乳腺の再構築技術、である。これらの技術開発によって、ダイレクトリプログラミング因子候補遺伝子のin vitro/in vivo機能解析を優位に進めることが可能となった。
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