平成28年度は、前年度引き続き、光活性型イノシトール三リン酸(IP3)産生酵素の作成および蛍光性IP3プローブの改良を行った。 前者については、分割型ヒトPLCzetaにフィトクロームBおよびその結合因子PIF6を付加することで、赤色光活性化/近赤外光不活性化型IP3産生酵素を作成し、その活性を評価した。分割箇所の異なる約10種類について調べたところ、IP3産生活性を有するXとYドメインの間で分割したPLCzetaを用いたもののうちの1種類で、赤色光/近赤外光依存的な活性化/不活性化が確認された。また前年度から開発を始めているフォトトロピン由来光活性化ドメイン(LOV2)挿入型のPLCzetaに関しては、挿入するリンカー部位を変えたものと幾つか作成したものの、光依存性に明らかな改善は見られなかったため、現在XYドメインおよびC2ドメインの内部にLOV2を挿入したものを網羅的に作成し、それらの光依存性IP3産生活性について評価を進めている。 一方後者については、IP3親和性が従来より高いものと低いものを作成し、マウス卵におけるCa2+反応時のIP3濃度変化の検出能を比較した結果、高親和性プローブによってより良いS/Nで測定できる可能性が示唆された。しかし細胞内でのIP3濃度変化に対するシグナル変化率は十分大きいとはいえず、FRETのドナー・アクセプターとなるそれぞれの蛍光タンパク質について循環置換型変異体を用いることなどにより、FRET効率の変化率のさらなる改善が必要である。
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