研究課題/領域番号 |
15K15028
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
岡田 泰伸 総合研究大学院大学, その他部局等, その他 (10025661)
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研究分担者 |
岡田 俊昭 生理学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (00373283)
沼田 かお理 (佐藤かお理) 福岡大学, 医学部, その他 (60614196)
赤塚 結子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (90321611)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アニオンチャネル / 生理学 / 細胞容積調節 |
研究実績の概要 |
細胞容積調節のメカニズムにおいて主役を果たすことにより、細胞分裂・増殖や細胞移動や細胞死誘導にも重要な役割を果たしている容積感受性外向整流性アニオンチャネルVSORの分子実体は長く不明であった。しかし、2014年4月に、LRRC8Aがヒト細胞のVSORの重要構成分子として発見された。そこで私達は、まず第1にマウス細胞においてもLRRC8Aが同様にVSORの重要構成因子であることを本研究において確認した。第2に、LRRC8AがVSOR以外のアニオンチャネル活性に関与する可能性を検討し、マウス細胞のCFTR (cAMP賦活性アニオンチャネル)、CaCC(Ca2+賦活性アニオンチャネル)、Maxi-Cl (マキシアニオンチャネル)、そしてASOR (酸感受性外向整流性アニオンチャネル)には何ら関与していないことを明らかにした。そこで、第3に、VSORとの間でタンパク質・タンパク質相互作用を示すことが知られているABCF2が、LRRC8Aと相互作用・結合するかどうかを免疫共沈降法で検討したとこところ、相互作用・結合はしないことを明らかにした。また、第4に、VSOR電流をごくわずかしか示さないKCP-4細胞が、VSOR電流を豊富に示す親細胞KB細胞に比して、LRRC8A遺伝子の発現が非常に乏しいかどうかをマイクロアレイ法で検討したところ、殆ど両者に差がないことを明らかにした。以上の結果より、①LRRC8Aは、ヒトのみならずマウス細胞においてもVSORの必要構成分子であること、しかし、②VSOR分子実体にはLRRC8A以外の未知の分子も不可欠であること、更には③他のアニオンチャネルではLRRC8Aは関与しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべて計画通りの研究を実施できた。その結果、第1に、マウス細胞のVSORにおいてもLRRC8Aが不可欠の役割をすることを明らかにし、第2にVSOR以外の既知の4種のアニオンチャネル(ASOR、CaCC、Maxi-Cl、CFTR)のすべてにおいて、LRRC8Aは関与しないことを明らかにし、第3に、このLRRC8Aは、VSORとタンパク質-タンパク質相互作用する細胞内ABCタンパク質であるABCF2とは相互作用・結合しないことを明らかにし、第4にKCP-4細胞のVSOR活性の乏しい原因は、LRRC8A遺伝子発現量の少なさにあるのではないことを明らかにした。これらの発見は、すべて世界はじめてのものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度という、残された1年間の研究期間においては、次の研究を実施する。第1に、LRRC8Aは他の4つのLRRC8メンバー(LRRC8B~E)のいずれかと共に発現することが必要であること、そしてそれらの組合わせの違いにより、VSORの髙陽電圧下での不活性化キネティクスの違いがもたらされることがHCT116細胞で報告されているが、HeLa細胞においても同様であるかどうか、同様であるとすれば、どのメンバーが必要なパートナーであり、どのメンバーが不活性化を速めたり遅めたりするのかを、ダブルノックダウン法やトリプルノックダウン法を用いて検討する。第2に、VSOR分子との相似性が議論されてきたASORへのLRRC8B~Eの関与の可能性を検討する。第3に、LRRC8AとパートナーメンバーLRRC8X(LRRC8B~Eのいずれか)の強制共発現によって、VSOR電流の亢進がもたらされるかどうか、もしもたらされない場合には何がミッシング分子(注:我々は、いま2つのミッシング分子Yの候補タンパク質を手にしている。)なのか、などの検討を行い、LRRC8分子のVSORのポア形成への関与の可能性の有無を確定する。第4にミッシング分子Yが特定された場合には、「LRRC8A+LRRC8X+Y」のトリプル強制共発現系を作成し、それら3分子への部位特異性・電荷変動的アミノ酸変異を導入して、これによってアニオン選択性や単一チャネルコンダクタンスやATPオープンチャネルブロッキングなどポア性状に変化がもたらされるかどうかを検討する。以上の結果を総合して、LRRC8AはVSORのポア形成に関与する分子なのか、単なるレギュレータ分子なのかを確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1に、実験が順調に進み、試薬類の使用が当初の予想より、下まわったこと、そして第2に、出席予定であった外国での国際シンポジウムの開催が1年延期されたことにより、用意していた外国出張旅費が未使用となったこと。
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次年度使用額の使用計画 |
別の資金で雇用していた外国人ポスドクの人件費が、平成27年度で切れたが、平成28年度も引き続き雇用しなければならないので、その資金の一部として使用する。
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