研究課題/領域番号 |
15K15029
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 秀紀 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (60242509)
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研究分担者 |
清水 貴浩 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (40353437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生理学 / 細胞・組織 / イオンチャネル / 生体膜 / 細胞容積 |
研究実績の概要 |
細胞の生と死(細胞容積調節とアポトーシス・ネクローシス)の両面に関わるvolume-sensitive outwardly rectifying (VSOR) anion channel(VSORアニオンチャネル)の分子実体の全容は、未だ確定していない。我々は、最近VSORアニオンチャネルの候補分子としてSSNK-1(仮称)を見出した。本年度は、SSNK-1に関して、主に以下の成果を得た。 (1)SSNK-1のアイソフォームのSSNK-2およびSSNK-3をクローニングし、それぞれHEK293T細胞に過剰発現させた。SSNK-1、SSNK-2の発現細胞ではVSORアニオンチャネル電流が増大したが、SSNK-3発現細胞では電流の増大が見られなかった。(2)SSNK-1発現細胞を低張溶液で処理すると、多量体を形成する傾向が見られた。(3)SSNK-1ノックアウトマウス由来の胎児繊維芽細胞において、VSORチャネル電流の抑制が観察されたが、SSNK-2ノックアウトマウス由来細胞のVSORチャネル電流に変化はなかった。(4)低張条件下で引き起こされる調節性細胞容積減少(RVD)は、SSNK-1過剰発現細胞において亢進し、SSNK-1ノックアウト細胞において抑制された。(5)VSORアニオンチャネルが機能的に発現しているヒト口腔類皮癌由来KB細胞およびVSORチャネル機能が欠落しているKB細胞由来のKCP-4細胞において、LRRC8Aの発現量は、遺伝子レベルおよびタンパク質レベルで有意差がなかった。 以上の結果から、VSORチャネルの構成因子としてLRRC8Aに加えて、SSNK-1が有力な候補分子であり、SSNK-1の機能が細胞容積調節機構に密接に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で、SSNK-1がVSORアニオンチャネルの機能発現に必須の役割を果たしていることを支持する成果を得た。これまでVSORアニオンチャネルの構成因子としてLRRC8Aが有力な候補として報告されているが、本研究でVSORチャネル機能を有する細胞と有しない細胞(KB細胞、KCP-4細胞)を使用した実験により、LRRC8Aでは説明できない結果を得た。SSNK-1に加え、SSNK-1アイソフォームのSSNK-2およびSSNK-3の発現細胞も作製が終了しており、今後SSNK-1が選択的にVSORチャネル機能に寄与する分子メカニズムの解明も可能である。以上のことから、進捗状況はおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策等は次のとおりである。(1)抗SSNK-1抗体ならびに各種細胞内オルガネラ蛋白質を認識する抗体やオルガネラマーカーとともに、免疫細胞染色を行う。また、細胞外低浸透圧刺激時やアポトーシス誘導時のSSNK-1の挙動について解析する。(2)SSNK-1のイオン選択性を変えると考えられる3種の変異体を作製し、過剰発現細胞において、VSORチャネル電流のイオン選択性を検討する。(3)SSNK-1ノックアウト細胞にSSNK-1を外因的に発現させ、VSORチャネル電流およびRVDが復活するかを検討する。(4)VSORチャネル発現細胞において、細胞内小胞のトラフィッキングに関与すると考えられている各種蛋白質、細胞骨格系を構成する各種蛋白質をノックダウンさせる。そして、細胞容積調節機構とアポトーシス誘導機構におけるSSNK-1のトラフィッキングの違いについて明らかにする。(5)抗SSNK-1抗体と抗LRRC8A抗体を用いた免疫沈降実験、架橋剤を用いた複合体形成実験を行い、SSNK-1とLRRC8Aが分子会合しているのかについて検討する。(6)パッチクランプ法によるSSNK-1由来電流測定系を用いて、アポトーシス誘導時のVSOR電流を選択的に活性化もしくは抑制する化合物を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は315円が余ったが、これは研究計画の変更や進捗状況の変化等によるものではなく、315円以下の物品の購入を希望しなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度において、物品費の一部として使用する予定である。
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