細胞の恒常性維持(細胞容積調節)と細胞死(アポトーシス・ネクローシス)の両面に関わるvolume-sensitive outwardly rectifying (VSOR) anion channel(VSORアニオンチャネル)の分子実体の全容解明のため、これまで候補分子として報告されているLRRC8Aとは別に、SSNK-1(仮称)に着目した研究を行い、主に以下の成果を得た。 (1)SSNK-1強制発現HEK293細胞において、特異的抗体を用いた免疫細胞染色およびビオチン化実験により、SSNK-1は、細胞内および原形質膜に発現していることが分かった。また、SSNK-1は、LRRC8Aと共に膜マイクロドメインに発現していることが示唆された。(2)SSNK-1、SSNK-2、SSNK-3の各強制発現細胞において、低張条件下で引き起こされる調節性細胞容積減少(RVD)は、SSNK-1の場合のみ亢進し、SSNK-2、SSNK-3の発現による亢進は観察されなかった。(3)SSNK-1ノックアウトマウス由来の胎児繊維芽細胞に、SSNK-1を強制発現させるとVSORチャネル電流の回復が観察された。また、ノックアウト細胞におけるLRRC8Aのタンパク質発現量は、野生型と差がなかった。(4)タンパク質間相互作用の検討のためのProximity Ligation Assayにより、LRRC8AとSSNK-1は近接して存在していることが示唆された。 以上の結果から、VSORチャネルの構成因子として、LRRC8Aに加えてSSNK-1が関与していることが示唆された。SSNK-1とLRRC8Aが相互作用することにより、VSORアニオンチャネルの機能が発揮され、細胞容積調節機構に密接に関与するものと考えられる。
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