研究課題/領域番号 |
15K15036
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
久保 義弘 生理学研究所, 分子生理研究系, 教授 (80211887)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 動的構造変化 / 非天然蛍光アミノ酸 / 光学解析 / P2X2 |
研究実績の概要 |
ラベル蛍光の強度変化により構造変化を検出する研究手法はイオンチャネルの動的構造機能連関研究において極めて有効である。なかでも、近年開発されたタンパク質中の目的箇所に、非天然蛍光アミノ酸 (fUAA) を取り込ませて蛍光ラベルする方法は、かさばりが小さく機能的差し障りがないこと、ペプチドのバックボーンに直結するため微細な構造変化もできることから注目されている。我々は、今年度、実験条件を最適化し、さらにATP受容体チャネルP2X2に適用して、ATP投与に伴う構造変化の検出に成功した。 1. ツメガエル卵母細胞を用いた発現実験の鍵を握るのは、改変tRNAとligation酵素をコードするプラスミドDNAの注入と、目的箇所にUAG配列を導入したイオンチャネルcRNAおよびfUAAのAnapの注入のタイミングと量である。今年度、核へのDNA注入に必要とされている前遠心は不要であること、両者の注入を1日ずらすこと、Anapの注入量を最低限にすることにより、背景光を減弱し記録時のSN比を上げることができること等の最適条件を決定した。 2. また、高NA値x20の水浸レンズを上方からアプローチし、かつ水面の動揺による蛍光シグナルの揺れを最小限に抑えつつ速い溶液還流を可能にするバスを試行錯誤の上、完成した。 3. 蛍光の測定においては、構造変化に伴う変化が小さいため、光源由来のノイズの減弱が課題であったため、複数種類の光源を試し、至適のものを決定した。さらに、消退が問題となったため、4%のNDフィルターを2つ使用することにより、克服した。 4. 以上の条件設定の下で、P2X2受容体の膜貫通部位、ATP結合部位近傍、両者のリンカー部位等の20以上の箇所にfUAAを導入し、そのいくつかでATP投与に伴う蛍光強度の変化の測定に成功した。現時点で、膜電位変化に伴う蛍光強度の変化は検出されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規方法論の導入においては、条件検討を重ね、まずは各種条件の最適化を行うことが求められる。今年度、発現条件、測定バスの形状、光学計測の条件について、試行錯誤の末、ほぼ最適化できたと考えている。これは、本格的に実験を始動するための必要不可欠な一歩であり、達成できたことには大きな進展であると考えている。また、条件検討ともに、本実験に向け、既に20以上のコンストラクトを作成し、解析を行い、全体のプロファイルについての感触をつかむことができた。この点も、着実な進展であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
リガンド投与による構造変化を検出することには成功したが、このチャネルの特徴である、明確な膜電位センサーを有しないにも関わらず、膜電位依存性ゲーティングを示すことに関するデータ、すなわち膜電位変化に伴う構造変化は、捉えられていない。2つの膜貫通部位のすべてのアミノ酸残基をひとつずつ網羅的にfUAAで置換して解析を行うことを計画している。また、膜上発現密度に応じて、膜電位依存性がシフトするため、発現密度を変えての実験も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末ギリギリのタイミングでの最後の購入96円の支払いが翌年度に回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は、年度末の購入96円の支払いに充当する。
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