研究課題/領域番号 |
15K15038
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
岩脇 隆夫 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50342754)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / 過食 |
研究実績の概要 |
本研究では小胞体ストレスによる引き起こされる過食のメカニズムに迫ることを目的としている。そのため今年度は過食行動自体の詳細な解析と過食行動が引き起こされる際のホルモンおよび神経細胞機能の予備的解析を行った。具体的には摂食量、飲水量、胃内容物量をC57BL/6系統だけでなく他のICRや129系統のマウスでも調査した。また、その際、餌が自由に食べられる状況だけでなく餌が与えられていない状況での調査も行った。まず重要な結果として得られた結果はマウスの系統間で同様なものであり捉えている現象自体は少なくともマウスに共通して見られることが分かった。おそらく多くの哺乳類(ヒトを含む)で同じことが言えると考えている。小胞体ストレス剤の投与から過食行動は数時間のうちに表れはじめ、およそ1日続くようである。胃の内容物も調べたが明らかに増加していたので餌をかじっているだけではなく食べていることを示せた。ただ過食に伴う多飲は生じなかった。過食行動は前もって行う絶食によっても引き起こすことができるが小胞体ストレスで引き起こされる過食の場合は餌がなくなると床敷や体毛を口にして胃を大きくすることもあった。つまり単に空腹が引き起こす過食とは異なる何かが小胞体ストレス性過食では生じていることを思わせる。この行動実験を行いながらマウスからは採血を行い、血糖値や各種ホルモン値の測定も行ったところ血糖値は小胞体ストレス負荷前後で僅かに上昇する程度であった。摂食抑制ホルモンはむしろ高まっていたし摂食促進ホルモンは低レベルであった。これらのことから小胞体ストレス性過食の原因が摂食を制御するホルモンの異常ではないと考えている。そこで脳内の神経細胞における小胞体ストレス応答性を調査してみたが小胞体ストレス負荷を与えると全体的にストレス応答分子が高まっていて摂食中枢だけにストレスがかかりやすい訳ではないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度分の計画として小胞体ストレス性過食マウスモデルの確立と摂食行動中枢における小胞体ストレス関連分子の動態調査をあげていたが十分ではないものの基本的には必要なデータを問題なく得ることができている。例えば小胞体ストレスと過食との関連性においてC57BL/6の単一系統だけでなく複数系統のマウスでストレス負荷時に生じる過食行動を論文掲載レベルにまで調査できている。これに加えて過食行動が誘発されている際の血中ホルモンレベルや摂食中枢における小胞体ストレス関連分子の活性化レベルが次の解析方針を決定できるレベルにまで調査されている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点での問題は「小胞体ストレス応答経路がどのように過食行動を誘発したのか?」ということである。これに答えるためにはやはり小胞体ストレス応答分子を摂食中枢ニューロン特異的に欠損させ、その行動を調査する必要がある。この目的のため既に4種類のCreマウスを入手しており各種floxマウスと交配を進めている。その子孫の解析が最も重要なヒントを与えてくれるはずで、小胞体ストレス誘導性過食に関与するニューロンや小胞体ストレス応答分子が特定されるだろう。そのあとは関与が濃厚と判明したニューロンや小胞体分子の機能特性に応じて解析を工夫し、先の問題に対する答えを出していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計上した経費を計画通り使用したが、試薬メーカーなどが行うキャンペンや特価などを運良く利用できたため、平成27年度でムリに使用することは避け、次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した経費は平成28年度計画のうち試薬等の購入にあてて計画以上に深い解析を行うために使用する予定である。
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