本研究では小胞体ストレスにより引き起こされる過食のメカニズムに迫ることを目的としている。そのため今年度は過食行動に関わる責任遺伝子の同定および分子機序解析を行った。具体的には小胞体ストレス応答分子を摂食中枢ニューロン特異的に欠損させ、その行動を調査した。この目的のため4種類のCreマウスを入手して、3種類のfloxマウスとの交配から合計12種類の二重遺伝子改変マウスを作出した。それらマウスに対して摂食量、飲水量、胃内容物量を比較調査しながら、小胞体ストレス剤の投与により促される過食行動とマウス遺伝子型との関連性に迫った。結果として特定の摂食調節神経核特異的に小胞体ストレス応答分子の一つを欠損させると、小胞体ストレス誘導性過食が生じなくなった。これにより小胞体ストレス誘導性過食の責任遺伝子が明らかとなった。次に責任遺伝子が過食を引き起こしたメカニズムに迫るために責任遺伝子により制御されることが既に分かっている2つの遺伝子を同じ摂食調節神経核で特異的に欠損させるマウスの作出に取りかかった。一方で、絶食による促される過食行動に対して同定した小胞体ストレス応答分子が果たす役割についても調査したところ、驚くべきことに先述の小胞体ストレス応答分子欠損マウスは過食行動が完全ではないまでも有意に抑制されていた。また詳細に迫るために摂食中枢由来の神経培養細胞を用いた解析を行ったところ、摂食を制御するホルモンの受容体シグナル伝達経路と小胞体ストレス応答分子の相互作用が明らかとなった。この2年間で非常に興味深いデータを得ることができた。しかしながら論文等で発表するには十分でない。今後は新たな実験手法などを加えながら研究をまとめつつ、発展させていく。
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