研究課題
若年期における集団生活での遊びを通した勝ち負けの経験は、優位と劣位の立場を交互に繰り返す「優劣性交互関係」にあり、成熟期の社会性獲得に重要とされている。本研究は、若年期の均衡した優劣性交互関係と成熟期社会性獲得の機能的な因果関係を神経ネットワークレベルから解明することを目的としている。これまでに申請者は幼弱期の社会的隔離による低養育環境下で飼育されたラットが、若年期に集団内での過度な優位性行動を示すことを発見している。また社会的隔離されたラットの内側前頭前野(medial prefrontal cortex; mPFC)のシナプス部位において、アクチン線維脱重合因子Cofilinが不活性化し、アクチン線維の流動性が低下していることにより、mPFCの神経活性低下を誘導していることを明らかにしている。当該年度では、さらにmPFCのスパインの形態を観察し、社会的隔離した動物では、mushroom型のスパイン数が過剰に増加し、幼若なstubby型のスパイン数が減少していることを明らかにした。mPFCにおけるCofilinの不活性化によるアクチン流動性の低下が、過剰なスパインタイプの変化を誘導し、mPFCにおける神経活性を低下させ、若年期の優劣性のバランスを崩壊させていることを示唆した。
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