研究課題
身近にいる親しい他個体が負の情動状態にいると、その個体が負の情動状態にいることを察知することができる。この情動状態の伝達は、自身が実際に危険を経験する前に危険を察知できるというメリットがあると考えられている。本研究の目的は、情動情報の伝達の神経機構を検討するために、情動ストレスを感受している個体の脳活動とその個体の傍らにいて情動情報を受け取っている個体の脳活動との異同を検討することである。昨年度、社会的な強者から社会的敗北刺激を受けた時に視床下部、中脳、大脳皮質の一部のオキシトシン受容体産生ニューロンが活性化されることを見出した。本年度はさらに、この社会的敗北を示した個体と接触させたケージメイトの脳活動をオキシトシン受容体産生ニューロンに焦点を合わせて検討した。活動はFos蛋白質の発現を検出することで検討した。オキシトシン受容体産生ニューロンは、オキシトシン受容体産生ニューロン特異的に緑色蛍光蛋白質を発現しているノックインマウスを用いて同定した。社会的敗北を姿勢を示した個体と接触させると、一部のオキシトシン受容体産生細胞が活性化された。しかし、社会的敗北を示した個体で強く活性化されていた領域(視床下部、中脳)のオキシトシン受容体産生ニューロンは、対照群と比較して有意には活性化されていなかった。従って、情動情報が伝達された時に活性化される神経機構は、情動ストレスの神経機構とは一部異なる可能性が出てきた。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Biological Psychiatry
巻: 81 ページ: 243-251
10.1016/j.biopsych.2015.11.021.