研究課題/領域番号 |
15K15043
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
村本 和世 明海大学, 歯学部, 教授 (10301798)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂質味 / フラビン蛋白蛍光イメージング / 光学イメージング計測 / in vivoイメージング / リパーゼ / 島皮質 / 味覚野 |
研究実績の概要 |
唾液に含まれる脂質分解酵素リパーゼが,口中では脂質を分解する消化機能を発揮するよりもむしろ「口中で中性脂肪の一部から脂肪酸を産生することで脂質味の感受性(感度)の調節などの役割を担っているのではないか」との仮説を検証することを目的として研究をスタートした。 先ず初めに,脂質が味覚として認識されているかどうかについての検討として,麻酔下の動物(ラット)の口中に脂質を含む溶液を滴下する刺激を行い,脂質刺激によって脳の味覚野周辺で応答が観察されるかどうかについて検討を行った.平成27年度は,味溶液を口中に滴下するための灌流刺激装置の構築(本科研費にて関連機材を備品購入)を行い,既設のin vivo光学イメージング装置にて味刺激に対する中枢応答をフラビン蛋白蛍光イメージング法にて観察した.このイメージング法は,神経細胞の興奮により活性化されるエネルギー代謝経路に含まれるフラビンの酸化還元反応による自家蛍光の強度変化を元に,神経の活動をモニターする方法である. しかし昨年度は味溶液の刺激系について構築の過程で種々の検討を行ったが,味溶液に値する脳の応答を安定して記録するまでに至らなかった.原因として,味刺激と同時に舌への触刺激が生じてしまうことへの対処,動物の麻酔の問題(麻酔薬の種類や強度),脂質液に関しては他の味質(甘味など)との流動性の違いなどが考えられた.このため,得られた実験結果を結論づけるに至っておらず,本年度に引き継ぐ課題である.ただ,応答が記録できた場合は,脂質刺激に対して一次味覚野周辺で応答が観察されており,脂質の情報が味覚野で処理されていることが示唆される.本年度は,引き続き安定して記録できるよう,先述の諸課題を解決していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
味覚刺激装置の構築に少々(予想以上に)手間取ってしまったことにより,実験実施スケジュールが遅れてしまった.特に,味溶液の刺激装置そのものの構築よりも,味刺激時に動物が不意に亡くなってしまうなどの問題が多発してしまった.これは,麻酔の問題や動物の気道の確保を行う際の手技的な問題,味刺激の灌流速度(刺激液量)の問題など,さまざまな問題が考えられたため,これらの問題検討を一つ一つクリアしていくのに時間がかかってしまった.また最大の遅延原因は,研究実施体制として当研究室所属の大学院生(久保英範)を参加させ,実験実施の多くを任せる予定であったが,年度半ばで家庭の事情により大学院を辞めなければいけない状況となってしまい,主となる実験実施者を失ってしまった.これは,実験計画当初は全く予期していなかった点である.さらに,本年度は実験室近辺での設備工事があったため,日中は光学測定時にノイズが入ってしまうことが多かった.日中発生する工事によるノイズを除去することが最後までできず,夜間しか実験を行えないなど,実験実施時間の大幅な制約を受けてしまった.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」欄でも記したように,主として実験を実施する予定であった大学院生の離脱は想定外で非常に研究遂行に影響してしまった.そのため,研究実施体制の見直しを行わざるを得なくなった.本研究は元々研究代表者の下,連携研究者2名で組織を作っていた.内訳は研究代表者の研究室に所属する研究者1名と,他大学に所属する研究者1名である.これら3名により,研究体制について現在話し合いを行っている.具体的には,他研究施設の連携研究者に所属する大学院生・学生にも協力を仰ぐなど話し合いの中で要請しているところである.また,研究代表者も役割を拡張して,種々の研究計画(実験実施)に自ら携わっていく予定である.1年目の研究計画は,主に2年目以降の研究の基礎となる事項として元々計画していた.すなわち,実験系の確立や実験条件の検討などが主であった.予想以上に問題点が出て遅れてしまったが,ある程度の系の構築や問題点の抽出はできているので,挽回は十分に可能である.いずれにしろ,現時点で研究実施での一番の問題点は,実験に携わる人材不足なので,研究参加者の確保に努め,計画時からの研究代表者と研究連携者の役割の拡充などで対処していくしかない.
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次年度使用額が生じた理由 |
先に記したように,想定外の理由などにより当初の予定通りに研究が進まなかった.そのため,当該年度に使用する予定であった消耗品費は実験の遅延などに伴い予定よりも使用額が少なくなってしまった.当該年度後半には,大学院生の研究離脱に伴い主となる研究実施者が不在となってしまい,研究費を無理に消費するよりも次年度以降改めて計画を練り直すとともに,体制を整え直して当該年度の実施計画の一部を次年度に繰り越して実施する方が得策と考え,初年度研究費が次年度に残るようにしたため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
初年度計画の一部を引き続き繰り越して本年度行う.初年度は実験の条件検討などのため,実験動物や試薬など多めに研究費を設定していたが,その分を繰り越して,動物や試薬の購入費として使用する.また,連携研究者との共同研究を密に行い,連携研究者が研究代表者の研究施設で行う共同研究の機会を増やすことを計画している.その際の消耗品費として,実験動物費,抗体などの試薬費等を支出する.
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