研究課題
近年、味覚の化学感覚受容体である苦味受容体(T2R)が消化管上皮にも発現し新たな生理機能を有することが明らかとなった。常在性腸内細菌叢は多種多様な代謝産物を産生することが知られているので、“本来外来性低分子化学物質を認識する苦味受容体が、腸内細菌叢の産生する低分子代謝産物の受容体としても機能する”との作業仮説を立てた。本申請研究は、健常者糞便由来の低分子代謝産物画分を全てのヒト苦味受容体(25種類)に対して網羅的かつ系統的にスクリーニングすることにより新たなリガンド(腸内細菌叢由来代謝産物)-苦味受容体ペアの同定を目指すものである。苦味受容体はGタンパク質共役型受容体(GPCR)ファミリーに属する分子群であるため、その活性化状態はGタンパク質依存性の細胞質内セカンドメッセンジャー変化を測定する方法もしくは、リガンド刺激依存的な受容体とベータアレスチンとのタンパク質間相互作用をモニターする方法(ベータアレスチンアッセイ)を用いて検出できると考えた。既報により苦味受容体の脱感作にダイナミンが関与していることが示されていたことから、まずはベータアレスチンアッセイ系の確立を試みた。T2R16とそのリガンドであるSalicinをモデル系として用いて検討したが、Salicin依存的なT2R16とベータアレスチンの会合を検出することは出来なかった。そこで方針を転換し、Gタンパク質依存性シグナルを測定する系の確立をさらに試みた。T2R16、キメラGタンパク質であるG16/gust44、NFAT-LuciferaseレポーターをHEK293T細胞に一過性に発現させ、Salicinで刺激したところ容量依存性の発光シグナルを検出できた。今後はこのアッセイ系を全ての苦味受容体に適応し低分子代謝産物のスクリーニングを進める。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
PLoS One
巻: 10 ページ: e0129394
10.1371/journal.pone.0129394
巻: 10 ページ: e0127445
10.1371/journal.pone.0127445
巻: 10 ページ: e0137106
10.1371/journal.pone.0137106