研究課題
平成27年度の研究実施計画は、(1)QT短縮症候群のマウスモデルの構築、(2)オリゴDNAを用いたin vitro系でのアッセイ、の2つであった。(1) QT短縮症候群のマウスモデルの構築1塩基置換による機能獲得変異によるQT短縮症候群、ドミナント・ネガティブ抑制によるQT延長症候群を治療対象と考えており、本研究では心臓に比較的特異的に発現するhERGチャネルの変異によるものを選択した。QT短縮症候群は、比較的高頻度に見つかるhERG N588K変異によるものを対象とした。同変異を有すノックインマウスをゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いて作製した。同マウスで、optical mappingで活動電位持続時間が短縮していること、テレメトリー心電図で活動中に不整脈の発生頻度が高いこと、イソプロテレノール負荷で不整脈誘発頻度が高いことが確認され、QT延長症候群マウスとして妥当なマウスが作製したことを確認することができた。(2) オリゴDNAを用いたin vitro系でのアッセイQT延長症候群マウスから単離した心筋細胞を用いて、in vitro系アッセイを行った。アンチセンスオリゴは、変異をもつ部分だけを変えたアンチセンスオリゴ(変異型では100%マッチ、野生型では1塩基ミスマッチ)、変異をもつ部分に加えてもう一つ塩基を変えたアンチセンスオリゴ(変異型では1塩基ミスマッチ、野生型では2塩基ミスマッチ)を作製して検討を行った。前者では、程度に違いはあるが変異型・野生型とも有意に発現を抑制した。後者では、変異型は有意に発現を抑制したが、野生型での抑制は有意ではなかった。以上から、やはり変異+1塩基変異でアレル特異的発現抑制が得られることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
QT短縮症候群の原因遺伝子をノックインしたマウスを作製し、その特性の検討から同マウスがQT短縮症候群マウスとして妥当であることを確認することができた。さらに、in vitroでアレル特異的発現抑制を確立することができた。以上から、当初の計画はほぼ達成されたものと考える。
平成28年度は、平成27年度に確立したQT短縮症候群マウスとアレル特異的発現抑制アンチセンスオリゴを用いたin vivo実験を予定する。(1)QT短縮症候群マウスの特性検討平成27年度に特性検討を行い、同マウスがQT短縮症候群マウスとして妥当であることが確認されている。本年度はさらに、細かい部分の詰めを行い同マウスモデルに関する論文を作製し投稿する。(2)AAVベクターの構築当該予算とは別予算枠で並行して行っており、本研究と補完的な関係にある研究で、ヘテロ核酸の心臓への導入の研究を行っているが、心臓に導入できることは確認されたが、その効率が十分高くなく、in vivo実験に応用できるところまで至っていない。そこで、計画を変更しAAV9ベクターを用いた遺伝子導入系を確立することとした。まず、AAV9ベクターを入手し、in vitro系でアレル特異的抑制を確認することから始める。この確認が済んだら、in vivoでの導入に取り掛かる。QT短縮症候群での抑制実験を終えるところまでは時間的に難しいと思われるが、同実験に取り掛かるところまで進展することを目標とする。
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