研究課題
心疾患におけるleucine-rich alpha2 glycoprotein 1の病態的意義を同定すべく心筋梗塞モデルにおけるLRGの発現を検討した。遺伝子発現は、心筋梗塞後1日をピークに14日目まで持続するLRGの発現上昇を認めた。またLRGのタンパク質の発現も4日目より有意な上昇を認め、心筋梗塞後のLRGの発現上昇が明らかとなった。 次にLRGの発現細胞を同定すべく免疫組織学的解析を施行した。CD11b陽性のmyeloid細胞においてLRGの著明な発現を認め、好中球やマクロファージにおいてLRGが発現していると考えられた。FACSを用いた解析により、LRGのかかる細胞での発現を確認した。次にLRG遺伝子欠失マウス(LRGKO)を用いて心筋梗塞後リモデリングにおけるLRGの意義を心エコー及び組織学的解析により施行した。その結果、LRGKOにおいて梗塞後の左室拡張末期径の増加と心筋短縮率の低下が認められ、梗塞後の左室リモデリングと亢進とそれに伴う心収縮力の低下が確認された。また組織学的には、線維化領域の増加を認め、心重量及び肺重量も増加し心肥大と心不全の悪化が示唆された。かかる表現型の機序を明らかにすべく、梗塞巣と非梗塞領域の境界領域における微小血管数を評価した。その結果、LRGKOにおいて微小血管の減少を認め、梗塞後の血管新生反応が減弱している事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在概ね順調に進捗している。その理由は以下の通りである。本研究の目的はマクロファージにより産生される分泌因子が心病態を制御するとする概念を確立する事であるが、LRGの発現がmyeloid細胞即ち好中球とマクロファージに発現している事を明らかにできた。またLRGKOにおいて心筋梗塞モデルを用いた表現型の解析が完了した。さらに、かかる表現型の機序に梗塞境界領域における血管新生が関わっている可能性が明らかとなった。以上の結果より、本研究の目的の半分以上が達成されたと考える。尚、研究費減額等に由来する事情によりLRG過剰発現モデルの作製は断念した。
今後は、LRGKOの病態に及ぼす影響のメカニズム解析に注力して研究を進める。まず第一にApelinを初めとする、血管新生マーカー蛋白質の発現を、LRGKO及び野生型マウスの梗塞心において、免疫染色による組織学的解析、及びRT-PCRにより検討する。さらに、Myeloid細胞におけるLRGの発現が、表現型の原因である事を検証すべく、放射線照射後のLRGKOに、野生型マウスの骨髄を移植する事により、マクロファージ等の骨髄由来の細胞のみに、LRGを発現させる事により、LRGKOの梗塞後リモデリングが抑制できるかどうかを検討する。梗塞後リモデリングに関する検討を進めた後、LRGの心保護作用を、心筋梗塞以外の心肥大、心不全等の病態モデルにおいて検討していく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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