研究課題/領域番号 |
15K15053
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金井 好克 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60204533)
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研究分担者 |
永森 收志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90467572)
大垣 隆一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20467525)
奥田 傑 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50511846)
中込 咲綾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (60423894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表皮バリア / 角質細胞間脂質ラメラ / リピドミクス |
研究実績の概要 |
哺乳類培養細胞でLIPXを発現・精製し、これをラットに腸骨リンパ節法で免疫してLIPXに対するモノクローナル抗体を作成した。得られた抗体は、ウェスタンブロッティングで良好な反応性を示した。LIPXの臓器レベルでのタンパク質の発現を明らかにし、mRNAと同様に皮膚において特異的に高い発現を示すことを確認した。新生仔マウスの表皮細胞の破砕液から膜画分を調製し、生化学的な手法により細胞膜との相互作用を検討した結果、LIPXが生体内においても膜貫通型タンパク質として発現していることを示すデータを得た。また、LIPXの基質と反応生成物をリピドミクス解析により明らかにするために、角質層からの脂質抽出条件の最適化と、哺乳類培養細胞を用いた組換えLIPX発現系の改良をおこなった。新生仔マウスを用いた透過型電子顕微鏡観察により、野生型マウスとLIPXノックアウトマウスでは、表皮組織の構築そのものには大きな異常が無いことを確認した。一方で、角質細胞質間脂質ラメラについては、LIPXノックアウトマウスのほうが野生型マウスに比べて13nm周期の縞模様構造が不鮮明であること、また異常な形態の角質細胞質間脂質ラメラが見られることなどを明らかにし、ノックアウトマウスが示す表皮バリアの破綻を説明する超微細構造の異常を捉える事が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従ってモノクローナル抗体を作成し、LIPXの臓器レベルでのタンパク質分布を明らかにした。また、LIPXが膜貫通型タンパク質であることを生化学的に示した。しかし、作製した抗体が免疫染色では良好な反応性を示さなかったことから、生体内での局在を明らかにすることはできなかった。リピドミクスによる基質と反応生成物の絞り込みは、脂質抽出条件の最適化や精製タンパク質の発現・精製系の最適化をおこなう事ができ、充分に準備が整ったと考える。また、当初次年度に実施する予定であった透過型電子顕微鏡による観察を前倒ししておこなうことができた。以上より、研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、リピドミクスによる基質と反応生成物の絞り込みをおこなう。マウス新生仔の表皮から角質を調製し、最適化した脂質抽出法を用いて角質抽出脂質を調製する。これを精製LIPXタンパク質と混合して反応させ、反応前後のサンプルをリピドミクス解析に具する。基質候補となる脂質分子種を見出し、精製LIPXタンパク質と混合して実際にLIPXによる代謝を受けることを確認する。本研究によって明らかになったLIPXの基質および反応生成物は、以上となった皮膚バリア機能を修復する薬物として使用できる可能性を有する。そこで、LIPXの反応生成物をノックアウトマウスの皮膚に塗布し、皮膚バリア機能の修復効果を検討する。免疫染色に適用可能なLIPX抗体作成は引き続き継続するが、エピトープタグを導入したトランスジェニックマウスの作成などの代替案も検討し、LIPXの生体内での局在を明らかにしたいと考えている。本研究で明らかにするLIPX の基質と反応生成物は、塗布剤として皮膚に適用することで、障害を受けた角質細胞間脂質ラメラを修復し、皮膚バリア機能を回復させる治療法に繋げることができるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
既述のように研究計画はおおむね順調に進展しているものの、得られた研究結果や研究の進捗に応じて一部研究計画を変更してしたために若干の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に実施するリピドミクス解析では、比較的高価な関連試薬・器具の購入が必要となるため、本年度の未使用額分の助成金はこれに充てる予定である。
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