本研究では、遺伝子上は存在が確認されているが、未だ生体内の活性物質が未知で機能が未解明である受容体群(オーファン受容体)のリガンドを探索する方法を開発した。研究の進展により、当初計画の課題となる点も見出されたが、解決策を探り、研究を新たな方向に進展させることに成功した。まず成果の1)として、解析対象オーファン受容体を効率よく抽出することに成功した。すなわち、申請者らが発見した広範囲の受容体に親和性を有する合成ペプチドの知見を生かし、このペプチドに親和性を有すると予測されるオーファン受容体を、in silicoの検索より抽出した。この際には、独自に開発に成功した"Pharmacological lineage analysis"(薬理学的リネージ解析)を用いた。成果の2)として、発光タンパク質融合受容体を用いた探索系の確立に成功した。細胞膜受容体のサブユニット相互作用を解析する際は、受容体カルボキシル基末端にGFPあるいはルシフェラーゼを付加した例に習い、新たに受容体アミノ基末端に付加することを試みた。しかし、発現効率が得られないため、受容体カルボキシ末への融合タンパク質として測定系を開発することとした。成果の3)として、光振動エネルギー移動の検出系構築;発光タンパク受容体と蛍光ペプチドが結合した際だけに起こる光振動エネルギー移動(BRET)を、高感度で検出する測定系を確立した。受容体のカルボキシル基側に注目した場合でもアロステリックな構造変化によリガンドの結合を検出可能である点は、当初計画には無い進展であった。さらに測定系の高感度化に成功しており、今回の研究成果をオーファン受容体のリガンドスクリーニングに応用可能と考えられ、今後の進展が期待される。
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