研究課題
私共は低分子量G蛋白質Arf6を中心とし、Arf6活性化因子であるGEP100とArf6シグナル下流因子であるAMAP1、さらに、AMAP1の結合相手EPB41L5からなる癌特異的経路を見出し、本経路の異常高発現が癌の浸潤・転移、並びに、抗癌剤抵抗性を促進することを明らかにしている。EPB41L5は本来は間充織に発現する。従って、本経路は癌特異的な間充織経路であり、分子機構として、β1 integrin ダイナミックス亢進とE-カドヘリン接着阻害を行ない、癌細胞の上皮間充織(EMT)プログラムの実行する経路であることを明らかにしている。続いて、癌細胞における本経路因子群の異常高発現に関して解析したが、Arf6 mRNA 5'-untranslated regionに典型的なG-quadruplex構造が存在する事を見いだした。本研究は、癌におけるArf6異常高発現の分子機構を明らかにすることを目的とした。KRAS遺伝子の変異や、KRASの異常活性化は多くの癌で見られる。特に膵癌では、その95%以上にKRASの活性化型変異が報告されている。本研究においては、膵癌KRAS変異によってArf6 mRNAのeIF4A依存的翻訳が上昇することを見出し、その過程にはPDCD4遺伝子の発現抑制が関与すること、KRAS変異とPDCD4抑制をつなぐ機構に関しても全ゲノム発現解析を行い詳細を明らかにした。他の研究費で得られた結果とも合わせ、膵癌では発癌過程と悪性度進展とが並行して起こること、従って、その悪性予後の分子的実態とその詳細を共に明らかにした。論文は現在投稿準備中であり、本研究は当初目的を達成した。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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