蛋白質シトルリン化は、カルシウム依存的酵素protein arginine deiminaseによって担われる。蛋白質中の陽性荷電を持つアルギニンが中性荷電のシトルリンになることによって蛋白質機能にしばしば大きな影響がある。遺伝子発現のエピジェネティック制御や癌化、自己免疫疾患への影響、そして、最近では、PAD4機能が好中球NETs形成に必須であることが報告された。本研究において、我々は、PAD4の活性制御因子を見出し、iPAD1と名付けた。当初iPAD1は、抑制的にPAD4を制御するかと考えていたが、条件によっては促進的に作用することを見出した。これまで、試験管内でPAD4活性化のためにはmMオーダーのCa2+を要したが、iPAD1存在下にはカルシウム感受性が大きく改善した。なお、研究計画に記載した、iPAD2の同定は未だ完成を見ていない。また、シトルリンをアルギニンに変換する酵素活性を探索したが、活性は見いだせなかった。さらに、いくつかのシトルリン化が報告されているいくつかの蛋白質でアフィニティ精製を行い、リボソーム合成制御に重要なinhibitor of growth 4 (ING4)に関して、いくつかの重要な相互作用因子がシトルリン化依存的にアフィニティを変えていることを見いだした。現在、このアフィニティの変化が、ING4および、その結合蛋白質の機能にどのような影響を与えているか解析を行っている。今年度中にはまとまらなかったが、来年度中には、iPAD1およびING4シトルリン化について、学会発表・論文発表する計画である。
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