研究課題
「地球上のすべての生き物の中には、すべての元素が含まれている」という「拡張元素普存説」が約10年前に提唱された。これをもとに「生体内に(微量ながらも)存在する個々の金属元素が、積極的に個体の生命活動を調節しているのではないか? またその調節機構の破綻が疾患の原因になり得るのではないか?」という新しい発想を抱いた。しかし、元素分析の計測技術(感度や精度)が不十分だった為、その学説の実験的証明が進まなかった。その後、元素分析研究者の不断の努力により、その学説を証明するために必要な「元素計測技術」が進歩し、ちょうど揃ってきたところである。細胞の中の「すべての金属元素の含量を測定」した報告はこれまでに全くない。そこで我々は、癌細胞や癌組織中の微量金属元素を網羅的に定量する測定系をICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)で立ち上げることを立案した。現状保有するICP-MS機器を生命科学で扱う検体 (たとえば細胞や組織)の定量用に改良する。改良した機器を使用して、我々が独自に樹立したスキルス胃癌の腹膜転移細胞株内の元素を分析してみることから着手した。平成27年度の実験において、生命科学で通常扱う検体(細胞抽出液や組織)に適したICP-MS法を立ち上げた。細胞抽出液(RIPAバッファー)やチューブ類について、不純物として含んでいる金属の多寡をICP-MSであらかじめ調べ、なるべく測定値に影響しない溶液や材料を選ぶことができた。サーモサイエンティフィックのRIPA液は不純物となる金属が少なく、優れていた。ICP-MSに掛ける前の検体処理法も最適化した。即ち、細胞抽出液を、1)塩酸処理、又は2)トリクロル酢酸処理(脱蛋白)した。タンパク質と結合している金属が完全に解離する検体前処理の条件を決定した。
2: おおむね順調に進展している
本年度(平成27年度)において、おおよそ研究実施計画書に記載した実験をひとつずつ実行し、ICP-MS実験に関する予備検討を一通り終えることができた。
平成28年度において、我々が樹立したスキルス胃癌の細胞株を測定材料にICP-MS測定に進んでいきたいと考えている。
実験のために購入を予定していた、原子吸光用金属溶液が安く購入できたため、未使用額が生じた。
細胞培養実験等、実験消耗品の購入に充てる計画である。
すべて 2015
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Nucleic Acid Therapeutics
巻: 25 ページ: 85-94
10.1089/nat.2014.0526
Laboratory Investigation
巻: 95 ページ: 1029-1043
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