血液脳関門の機能維持には、異なる細胞間の相互作用が重要な働きをする。これまでに、Eogt変異マウスにおいて、Notchシグナルの低下と、脳血管のバリア機能の異常を見出した。さらに、Eogtが血管内皮に高発現すること、そしてコンディショナルEogt変異マウスを用いることで、血管内皮細胞においてEOGTが機能することを明らかにした。本研究課題の実施途中に、Non-canonical Notchシグナル経路がVE-カドヘリンを介した接着に関与することが報告された。しかしながら、Eogt欠損マウスの免疫組織染色の結果からは、明らかなVE-カドヘリンの発現レベルの変化は観察できなかった。そこで、タイトジャンクション形成におけるEOGTの役割を解析するために、OcculudinとClaudin5の遺伝子発現の解析を行なった。RT-PCRの結果、脳血管内皮において、Occuludinの発現レベルは変化しないものの、Claudin5の発現の低下が観察された。しかしながら、Claudin5のプロモーター解析からは、RBPJの結合予想部位を確認することはできなかった。従って、Notchシグナルで制御される転写因子などによる間接的な制御が示唆された。今回の研究から、EOGTによるNotch受容体の精密制御が、脳毛細血管のバリア機能に重要であることが明らかになった。 今回の成果により、糖鎖修飾のNOTCH受容体における機能的な重要性が確立した一方で、解析方法の限界で、NOTCH受容体糖鎖の時空間分布に関する情報は限られている。今後の研究で、O-GlcNAcをはじめとするNOTCH受容体糖鎖の発現変化と病態との関連性の理解が進むことで、糖鎖を標的にした神経保護薬などの開発に道を開くことが期待される。
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