研究課題
細胞の老化は、さまざまなストレスで誘導される不可逆的な増殖停止の状態である。細胞複製の繰り返し、DNA損傷、過剰な増殖シグナルなどが働くことで、細胞の内在性のプログラムが作動するものと考えられる。不要な細胞を抑制し、腫瘍化へのバリアにもなり得る。その一方、老化細胞はアクティブな代謝活性と分泌型の形質をもつなどの特色も共有している。こうした細胞老化のプログラムには、遺伝子制御とエピゲノムの変換が関わると予期されるが、詳細は不明である。本研究では、細胞老化におけるエピジェネティックな機序の観点から、老化の内在性のプログラムを明らかにすることを目的とした。そのため、細胞核・クロマチンの因子に対するsiRNAライブラリーを用いて、細胞老化を抑制する分子群を新たに同定した。すなわち、当該因子を阻害すると、ヒト線維芽細胞の老化が誘導された。実際には、細胞核・クロマチンに関わる遺伝子群をスクリーニングして、細胞老化に関わる因子群を抽出し、それらの因子に関して各種の細胞株での発現状況、ノックダウン効果を検討した。そのうち、ヒストンH4K20モノメチル化酵素(SETD8/PR-Set7)が老化細胞でタンパク質量が著減すること、SETD8を阻害すると細胞老化が誘導されて、核小体とミトコンドリアに関わる遺伝子群の発現が増加することから、SETD8が細胞老化の代謝リモデリングを抑制する新知見を見出した。細胞老化のエピジェネティックな新機序について報告した。
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