研究課題
神経細胞の軸索起始部(AIS)には、活動電位の発生と軸索極性の発達を保障する特別な細胞骨格構造が存在する。そして、この構造の形成にはスペクトリン/アンキリン/アクチン系が重要な役割を果たすことはすでに示されてきていた。しかし、もう一つの特徴的な細胞骨格構造、「細胞体内部から貫通する太い微小管の束(AIS微小管束)」の働きはこれまでほとんど不明であった。本研究においては、我々が近年発見した「微小管束化因子、MTCL1」の遺伝子改変マウスが小脳プルキンエ細胞の「AIS 微小管束の形成異常」と「AIS の構造・機能の異常」を示し、そのことに起因する運動失調症を呈することを明らかとした。そして、こうした異常がMTCL1の微小管束化、安定化活性の欠失に起因していることを証明した。さらに、原因不明の脊髄小脳変性症を示す患者さんゲノム200例に対してMTCL1のエキソーム解析を進め、一家系ではあるがMTCL1の機能に不可欠なC末端微小管結合領域に点変異が認められることを明らかにすると共に、この変異(V1745M)が実際にプルキンエ細胞におけるMTCL1のAIS微小管制御活性を損なっていることを明らかとした。以上の結果は、これまでほとんど明らかとされていなかったAIS微小管の生理的重要性を初めて明らかとするともに、この制御機構の脆弱化がヒトにおける脊髄小脳変性症の発症メカニズムの一つであることをも示唆する極めて重要な成果である。これらの成果をまとめた論文を、本研究期間に国際誌に発表した。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
EMBOJ
巻: 36 ページ: 1227-1242
10.15252/embj.201695630.
http://www.tsurumi.yokohama-cu.ac.jp/mcbl/suzuki/index.html
http://www.yokohama-cu.ac.jp/res_pro/news/10170324.html