研究課題/領域番号 |
15K15071
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山田 雅巳 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (10322851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経細胞遊走障害 / 細胞内物質輸送 / 微小管関連因子 / 遺伝性神経疾患 / 創薬スクリーニング |
研究実績の概要 |
本研究課題は、発生初期の神経細胞遊走障害による脳層構造の形成異常を特徴とした遺伝性神経疾患に対する汎用な治療薬開発を目的とする。これまでに、これらの疾患の責任遺伝子は数多く同定されているが、対症療法を除外すれば、根本的な治療法は未だ確立されていない。発達障害は、疾患自体が永続的で社会的に適応できない患児と家族の苦悩や負担は大きく、現代医学が解決すべき喫緊の課題の1つである。これらの疾患を誘発する責任遺伝子は、多種多様であるが、発達遅滞あるいは痙攣といった症状に類似性あるいは関連性が見られることから、疾患発症に至る共通の分子制御メカニズムが示唆される。本研究課題は、微小管関連因子の細胞内物質輸送および分子ダイナミクスの撹乱・破綻を指標に共通の創薬標的を同定し、低分子化合物による網羅的探索を行う。本研究課題期間内に於いて、申請者が技術開発した「インビトロ神経細胞遊走障害を伴う疾患の判別方法と有効な治療薬スクリーニングへの応用(特願)」にて、これまでに神経細胞遊走障害に起因する遺伝性神経疾患の責任遺伝子とされているものに対する網羅的にスクリーニングを行う。神経細胞遊走障害が見られたものに対して、神経細胞遊走活性の回復・改善を指標して低分子化合物の薬剤一次スクリーニングを網羅的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、「インビトロ神経細胞遊走障害を伴う疾患の判別方法と有効な治療薬スクリーニングへの応用(特願:2013-20620)」の技術を開発した。本技術は、新生マウス(生後3日前後)から摘出した小脳の顆粒細胞で凝集塊を形成させて、神経細胞が放射状に移動していく距離を測定することにより遊走活性を評価するものである。平成27年度に於いては、上記の特願技術を応用して、LIS1神経細胞遊走障害を伴う先天性神経疾患の責任遺伝子として同定されている微小管関連遺伝子をRNA干渉によって特異的にノックダウンし、神経細胞遊走活性に対する影響を調べた。具体的には、ピペットチップ型電極-遺伝子導入装置を用いた電気穿孔法により、特定遺伝子に対するsiRNAを神経細胞内へ導入することによって標的となる微小管関連因子の RNA干渉法によるノックダウン試みた。LIS1ヘテロ欠損マウス由来の小脳の顆粒細胞を用いた先行研究より、責任遺伝子のノックダウンによる神経細胞遊走活性[平均移動距離]に於いて50%程度の低下がみられるものに対して、低分子化合物の薬剤スクリーニングを行う予定であり、現在スクリーニング中である。以上より、本研究課題は、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度内に於いては、LIS1、ダイニン、ダイナクチン等を含む微小管上の輸送複合体の再編成に関与することが期待される標的遺伝子に対しても、上記の小脳の顆粒細胞による網羅的スクリーニングを行う。微小管モーターを含む輸送複合体あるいはその制御因子の細胞内物質輸送は、核―中心体(N-C)カップリング、微小管を介した核の牽引移動などと関連して神経細胞遊走に於いても重要な役割を果たしていることが示唆される。 さらに、これまで申請者は、低分子量GTPase Rab6A(活性型)が、LIS1-ダイニン複合体としてアイドリング状態で神経細胞終末まで輸送されてきたダイニンを(再)活性化させること、低分子量GTPase ADP-ribosylation factor-like3(ARL3)と細胞質ダイニン軽鎖DYNLL1/LC8がそれぞれダイナクチン(P150Glued)あるいはダイニンに直接作用することによって中心体周辺まで輸送されてきたダイニン-ダイナクチン複合体を崩壊させて輸送複合体を再編成させることを明らかにしている。これらの低分子量GTPaseの活性調節因子に対しても同様にスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27度は、19,324円の未使用額(残高)が発生した。次年度以降、ガラスボトムディッシュなどの消耗品(45,000円)を購入するために、来年度使用するために繰越し金とした。
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次年度使用額の使用計画 |
蛍光分子イメージングによる顕微鏡観察のため、ガラスボトムディッシュを購入予定である。
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