研究課題/領域番号 |
15K15072
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
馬籠 信之 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70390052)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心筋細胞 / 光感受性 / 光制御 / 細胞膜 |
研究実績の概要 |
当該年度においては、申請課題に記した計画のうち、光感受性化合物の細胞膜への影響の確認を中心に行なった。また、細胞活動の光制御の知見を活用した応用について共同研究を進めた。得られた主な結果は下記の通りである。これらの結果は、現在、論文投稿に向け、その準備を進めている。 (1)蛍光物質を封入したリン脂質小胞体(リポソーム)を作成し、光感受性物質を作用させた後に光刺激を行ない、細胞膜の光刺激応答機能獲得性について検討した。これは、細胞膜を透過するイオンの濃度によって、リポソーム内の蛍光強度が異なる性質を利用したものである。この系について蛍光観察を行なったところ、光感受性化合物の存在下においては、照射する光の波長に応じて物質の膜透過性が大きく変化することを確認した。 (2)研究の応用展開として、心筋以外の、自律的な興奮活動を示す細胞においても同様の実験を行なった。この系においても、用いる物質の濃度や、照射光を適切に選択することにより、細胞活動が光応答性を示すことを確認した。この系の発展として、マイクロアクチュエーターや、光駆動型微小ピンセットの作製など、主としてマイクロデバイスへの応用展開が考えられ、駆動系の開発に向けて研究を進めている。 (3)心臓灌流実験を行なうための準備として、血液中の酸素あるいは二酸化炭素濃度を変化させた場合に、細胞活動を観察するための実験系のセットアップを行なった。観察は、通常の可視光観察に加え、蛍光観察も同時に行なうことを想定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書通り、リポソームならびに心筋細胞におけるイオンの膜透過性については確認を行なうことができた。この一方、計画していた電子顕微鏡観察については、機器所有施設側の都合によって、予定通りの観察が行なえていない。しかしながら、応用展開として、マイクロアクチュエータの構築の可能性を確認することができた。これらを総合すると、計画書の記載内容だけでなく、新たな方向も見えていることから、全体としては「おおむね順調」であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載した通り、予定していた電子顕微鏡による細胞表面の観察が困難な状況になった。電子顕微鏡観察は、細胞活動に対して重要な情報を与えうる手法であるため、早急に対処をする必要がある。従って、電顕による細胞表面の直接観察が可能となるよう、共同で研究を行なえる研究者との研究体制を整える。 また、ラット心臓の右心房・ペースメーカー部位に対し、光制御を行なう。方法は、申請書に記載した計画に則り、進める予定である。その後、心臓全体に対して、光感受性物質を灌流させ、外部からの光照射による心臓活動制御について検討を進めることを計画している。活動の観察には、通常の可視光観察に加え、蛍光染色によって得られる蛍光強度から、収縮活動の定量化を試みる。同時に、心室細胞の光応答性についても、これらと同様の操作を行ない、知見を深めたい。 さらに、遺伝子導入を行なっている研究者の協力を得られることとなったため、申請課題の応用として提示した「新しい遺伝子導入法の開発」について開始することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本申請課題は動物実験を主としているため、実験を実施する場合の細胞培養や基礎的な観察などについては申請者の所属する機関の共同実験施設を利用し、また、本課題の一部については、学内および学外の研究者と共同で研究を行なうこととした。これら、研究を推進してく過程において、実験施設ならびに共同研究者より使用消耗品の協力を得ることができた。また、先に記載した通り、電子顕微鏡観察が申請段階で予定していた通りに進捗せず、結果として観察に要するものとして計画していた分の費用が生じなかった。 上記の理由により、当該年度においては、計画よりも少額の使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、(1)前年度に進捗しなかった電子顕微鏡観察の実ための試料作製、(2)申請段階では「将来的な応用」としてした遺伝子導入に向けた実験装置の改良と観察設備の整備、の二点を中心に予算を使用する。また、研究成果の早急な公開のため、オープンアクセスジャーナルへの論文掲載のための費用に充てたい。
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