研究課題
小児がんは遺伝子変異が極めて少ない。何故、遺伝子変異がないのにがんになるのか?この課題に迫るために、私たちはがん発生初期を捉える新しい技術開発を行い、がん発生極初期の細胞のスフェア培養に成功した。これにより、神経芽腫モデルでは、がん化が組織学的に明らかでない胎児期中期に、がん形質の獲得が起こることを見出した。以上を基盤に小児がんの発生機構を解くことが本研究の目的であった。得られた結論は、用いた神経芽腫モデルではエピジェネティックな制御ががん形成に重要であること、EZH2が治療のための優れた分子標的となることであった。マウス神経芽腫腫瘍スフェア培養法によって、E13.5の時期からMYCN Tgマウス交感神経節からは継代可能なスフェアを培養でき、腫瘍形成能があることを明らかにした。そこで、野生型およびMYCN TgマウスのE13.5交感神経節スフェアについて遺伝子発現アレイを用いた解析を行った。その結果、MYCN下流遺伝子群をはじめ、特徴的な機能を持つ遺伝子群が1.5倍以上の有意な変化を示した。殊にポリコーム抑制複合体2(PRC2)の標的遺伝子の変化が特徴的であった。DNAメチル化をMBDシークエンスで解析すると野生型とMYCN Tgマウスとの間に差を認めた。プロモーター領域のDNAメチル化に焦点を当てて、それを遺伝子発現解析結果と組み合わせると、プロモーター領域のDNAメチル化が起き発現が抑制されている遺伝子の組合せ度数が患者の予後と強く相関することが分かった。一方、E13.5交感神経節スフェアやMYCN Tgマウス腫瘍などを材料にゲノム変化をアレイCGH、エクソームシークエンスで解析したところ、ゲノムレベルの異常はほとんど見られず、この結果もヒト神経芽腫のデータと合致した。さらに、PRC2の中核分子EZH2の阻害剤を用いるとMYCN Tgマウスの腫瘍形成を著しく抑えた。
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