研究課題
分裂期チェックポイント因子BubR1の発現が低下したBubR1発現低下マウスは急速な早老症を発症することが報告された。興味深いことに、BubR1発現低下マウスは、p53とp21、p16INK4aの老化マーカーが軒並み発現上昇していたが、p16INK4aを高発現した細胞をマウス個体から人工的に除去したところ、早老症の症状が消失した。この結果は世界中から注目を集めた。しかしながら、分裂期チェックポイント異常が老化を誘導する分子メカニズムは不明のままである。最近、BubR1がテロメアに集積することが示された。こうした知見から申請者らは、BubR1低下による早老症はテロメア短縮が関与する可能性を考えた。本研究では、ヒトBubR1欠損症で高頻度に検出される1833delTを持つモデルマウスを作製するとともに、日本人患者の細胞株を樹立して、BubR1低下による早老症におけるテロメア不安定性の関与を明らかにすることを目的とする。1833delTホモ接合体マウスの作製過程で、偶然に12塩基が欠失したマウスを取得した(Δ608-611 LAST)。1833delTホモ接合体マウスは胎生致死であった。一方、1833delTとΔ608-611 LASTのコンパウンドヘテロ接合体マウスはメンデル則にしたがって誕生した。しかし5ヶ月の時点では早老症の症状は見られず、さらに長期間の観察が必要と考えられた。日本人患者の線維芽細胞を樹立した。この細胞で寿命遺伝子SIRT2を高発現させると、BubR1タンパク質が増加して染色体が安定化した。今後、BubR1欠損細胞にテロメア不安定性を誘導して、老化が促進されることを確認していきたい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
Pediatr Blood Cancer
巻: 64 ページ: e26255
DOI: 10.1002/pbc.26255
Genes Cells
巻: 21 ページ: 568-578
doi:10.1111/gtc.12362
Matrix Biol
巻: 56 ページ: 132-149
doi: 10.1016/j.matbio.2016.06.003