研究課題
一部のがん細胞では、上皮間葉転換を起こすことなく1つの集団を形成したまま浸潤する集団的浸潤が観察され、予後や悪性度といった点から注目を集めている。この集団的浸潤においては、複数の細胞が統率のとれた集団として振る舞うことを可能とする何らかの「秩序や法則性」が存在すると考えられる。これまでの研究から、研究代表者は、Rab低分子量Gタンパク質のメンバーであるRab13の標的蛋白質として見出したJRABが「秩序や法則性」を生み出すキーファクターであるという仮説を提唱し、本研究では、その仮説の証明を試みてきた。すなわち、バイオインフォマティクスと生化学の融合研究により、JRABの構造変化モデルを構築し、JRABのRab13依存的な構造変化を証明した。また、JRABのFRETプローブを用いて生細胞におけるJRABの構造の時空間変化を証明した。さらに、JRABの構造変異体を発現させた上皮細胞株を用いた創傷治癒アッセイを行い、JRABの構造変化の可塑性が効率の良い集団的細胞運動を可能にすることを示した。最終年度の本年度は、まず、このJRABの構造変化の可塑性が3次元培養系においても集団的細胞運動を制御することを示した。さらに、個体レベルでのがん転移における重要性を証明するため、JRABの構造変異体を発現させた肺がん細胞を作製し、マウス個体を用いたがん転移実験を開始したが、本研究期間中には最終的な結論を得るには至らなかった。また、本研究では、JRABの構造変化を感知できる抗体やJRABとJRAB結合分子群の蛋白質間相互作用を阻害する抗体、ペプチドの産生を目指したが、これらについても本研究期間中には充分な成果が得られなかったため、今後も継続してチャレンジしていきたい。
すべて 2016
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Mol. Biol. Cell
巻: 27(20) ページ: 3095-3108
10.1091/mbc.E16-05-0332