研究実績の概要 |
これまでに慢性腎不全モデルマウス脳では海馬CA3領域の神経変性が報告されていた(Fujisaki K, Nephrol Dial Transplant 29:529-38, 2014)。そこで、平成27年度に樹立した慢性腎不全モデルマウス脳の病理解析を行った。行動解析を終えて術後8週で摘出した野生型とMth1/Ogg1-double knockout(TO-DKO)マウスの脳切片で変性神経細胞を特異的に検出するFluoro Jade Cを持ちた染色を行った。その結果、野生型、DKOマウスのいずれ検出されなかった。さらに、同サンプルを用いて神経変性時に観察される活性型ミクログリアのマーカー(CD68)と活性化アストロサイトのマーカー(GFAP)の蛍光免疫染色を行ったが、海馬、大脳皮質にグリオーシスの所見は認めなかった。 酸化DNA損傷に脆弱なTO-DKOマウスを用いても慢性腎不全による脳機能障害の亢進は見られなかったことから、本研究で用いた左腎動脈結紮と右腎の部分摘出(6分の5摘出)による慢性腎不全モデルマウスでは、脳機能障害は誘発されないと結論された。 一方、コントロールの野生型とTO-DKOマウスの行動を詳細に比較解析したところ、34-40週齢と79-82週齢のマウスにおいて、TO-DKOはホームケージにおける夜間と24時間の運動量が野生型よりも多いことが分かった。TO-DKOは核DNAへの8-オキソグアニンの蓄積が腹側線条体(カレハ島を含む側坐核)で野生型と比べて増加しており、TO-DKOと野生型の2群の夜間運動量、24時間運動量と正の相関を認め、MTH1/OGG1欠損は特定領域の神経細胞における8-オキソグアニン蓄積の亢進をきたし、脳機能に影響を及ぼすことが明らかになった。
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