研究課題
生体内のあらゆる組織はその発生過程において、一部の無血管組織を除き、動脈・静脈・毛細血管からなる血管ネットワークがくまなく張り巡らされる。この血管成長を担っているのが、血管内皮成長因子(VEGF)と、その受容体である2型血管内皮成長因子受容体(VEGFR2)のシグナルである。VEGFシグナルは血管発生だけでなく、がんの血管新生にも大きな役割を果たしており、VEGFの働きを阻害する抗VEGF中和抗体(ベバシツマブ)が2004年、米国FDAにより認可され、VEGF阻害剤のがん抑制効果が世界的に脚光を浴びている。その一方、VEGFシグナルの単一細胞レベルでの血管内皮細胞の挙動をはじめとする基礎的な知見がやや不十分なまま、応用研究が先行してきた傾向が指摘されている。特にin vivoにおいては血管内皮細胞1個1個の挙動に対する作用はcontroversialであり、in vitroとin vivoで異なる事象も観察される。VEGFシグナルの発芽、血管増殖に関する役割は広く認知されているものの、血管の安定化・成熟化の過程に関してはよく知られておらず、透過性亢進作用からむしろ血管を不安定化させるとされている。この数年で、組織、個体のイメージング技術、遺伝子工学のテクノロジーは飛躍的な進化を遂げた。本研究は、これらの最新のテクノロジーを駆使し、また申請者らの確立した血管可視化技術、および遺伝子改変マウスを用いてVEGFシグナルの血管安定化における役割を明らかにすべく遂行された。具体的には神経特異的、またはグリア特異的VEGF欠損マウス網膜では、既に成熟した血管の安定性が損なわれており、この表現型は血管内皮特異的VEGFR2欠損マウスでも再現された。VEGFはVEGFR2を介して血管安定性を正に制御するという、これまでのパラダイムとは逆の作用があることを証明した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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