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2015 年度 実施状況報告書

選択的ユビキチン化阻害剤を用いたミスセンス病の治療法開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K15091
研究機関東京医科大学

研究代表者

中島 利博  東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード分子病態学 / 筋ジストロフィー / 創薬開発 / タンパク質分解系 / ユビキチン
研究実績の概要

ミスセンス変異による疾患群の病態生理学の解明されるべき課題の一つに試験管内のタンパク質の機能と細胞・生体内機能のギャップがある。すなわち、ミスセンス変異により当該タンパク質の試験管内での機能は正常型に比べ低下するものの部分的に残存しているにもかかわらず細胞内では機能が認められない場合がある。これまでは、当該遺伝子の必要性・閾値、もしくは redundancy によりこの現象は説明されてきたが、近年、細胞内で変異タンパク質が不良タンパク質として認識されユビキチン・プロテアゾーム経路にて分解され、結果として当該タンパク質が存在できなくなるという新しい機序の存在が明らかにされようとしている。例えば、肢帯型筋ジストロフィー (Limb-Girdle Muscular Dystrophy : LGMD) の type2D の場合、ジストロフィンと会合してジストロフィン糖タンパク質複合体を形成する細胞膜糖タンパク質の一群であるα-サルコグリカン (α-sarcoglycan : SGCA) 遺伝子の変異が原因であるが、試験管内では 30 % 程度の複合体形成活性が残存する。一方、患者細胞内では SGCA タンパク質自体が検出できず、最近、イタリアのSandonà 博士らは研究代表者が発見したシノビオリンがその分解の中心的役割を成すことを報告した。今年度、全身性のノックアウトマウスの骨格筋においてもミトコンドリアの集積が認められることから、筋組織においてもシノビオリンによるミトコンドリア制御機構が存在することが示唆されていた。尾懸垂による廃用性筋萎縮、いわゆる二次性サルコペニアモデルがシノビオリン阻害剤で治療と予防が可能なことが明らかとなった。また、シノビオリンの用区政活性を有する天然物を発見し、迅速かつ安全な治療法の開発の緒についた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

①横紋筋におけるシノビオリンの生理活性、ならびに筋委縮における同分子の作用、さらにシノビオリン抑制剤の効果が明らかとなりつつあること。

②上述したように、シノビオリンの阻害活性を有し、かつ食歴のある天然物にシノビオリン阻害活性があることを発見している。

①、②より迅速にLGMDをはじめとする治療法開発の可能性が高まったため。

今後の研究の推進方策

Sandonà 博士との共同研究で応募者の有する種々のユビキチン化阻害剤の変異型 SGCA の半減期を指標とした一次スクリーニングが終了している。したがって、本研究では
1)Sandonà博士の有する患者由来筋細胞の細胞生理学的活性、ならびに Tedesco 博士 (イギリス) が作製した患者由来iPS細胞を SCID マウスに移植することで得られる LGMD のモデル動物の横紋筋の生理学的機能、すなわち治療効果を指標とした化合物の二次スクリーニングを行う。とくに、天然物の効果判定を行いたい。
2)応募者は最近、筋細胞の機能発現に重要なミトコンドリアの biogenesis がシノビオリンにより制御されていることを発見した。本研究では筋細胞におけるシノビオリンによる SGCA 分解とミトコンドリア制御経路という2つの経路の重要性を明らかにする。筋委縮におけるシノビオリンの病態生理学的役割を明らかにできつつあることから、筋肉特異的シノビオリンノックアウトマウスの解析も加えたい。

次年度使用額が生じた理由

当該年度の研究費残不足により、支払いを翌年度に先延ばしにした為。

次年度使用額の使用計画

平成28年度の研究費と合算し、支払いしたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Mitochondrial Ubiquitin Ligase Activator of NF-κB (MULAN) regulates NF-κB signaling in ER stress-stimulated cells.2016

    • 著者名/発表者名
      Fujita H, Aratani S, Fujii R, Yamano Y, Yagishita N, Araya N, Izumi T, Azakami K, Hasegawa D, Nishioka K and Nakajima T
    • 雑誌名

      Int J Mol Med.

      巻: 37 ページ: 1611-1618

    • DOI

      10.3892/ijmm.2016.2566

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The E3 ligase synoviolin controls body weight and mitochondrial biogenesis through negative regulation of PGC-1β2015

    • 著者名/発表者名
      Fujita H, Yagishita N, Aratani S, Saito-Fujita T, Morota S, Yamano Y, Magnus J. Hansson, Inazu M, Kokuba H, Katsuko Sudo K, Sato E, Kawahara K, Nakajima F, Hasegawa D, Higuchi H, Sato T, Araya N, Usui C, Nishioka K, Nakatani Y, Maruyama I, Usui M, Hara N, Uchino H, Eskil Elmer, Nishioka K, Nakajima T
    • 雑誌名

      EMBO J

      巻: 34 ページ: 1042-1055

    • DOI

      10.15252/embj.201489897

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Synoviolin, as a new stellar factor for understanding chronic inflammation2016

    • 著者名/発表者名
      Nakajima T
    • 学会等名
      MOSCOW INTERNATIONAL FORUM OF BONES AND JOINTS DISORDERS/THE INTERNATIONAL SCHOOL CONFERENCE (ISC)
    • 発表場所
      Moscow, Russia
    • 年月日
      2016-04-18 – 2016-04-21
    • 国際学会
  • [学会発表] 慢性炎症に関わるシノビオリンの新規エネルギー代謝調節機構2015

    • 著者名/発表者名
      藤田英俊、荒谷聡子、八木下尚子、須藤カツ子、中島若巳、内野博之、西岡久寿樹、中島利博
    • 学会等名
      BMB2015 (第38回 日本分子生物学会年会、第88回日本生化学会大会 合同大会)
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-12-03 – 2015-12-04
  • [学会発表] Synoviolin and metabolic disorder2015

    • 著者名/発表者名
      Nakajima T
    • 学会等名
      Shanghai-Tokyo Workshop on Rheumatology 2015
    • 発表場所
      上海,中国
    • 年月日
      2015-07-31 – 2015-08-01
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 東京医科大学 医学総合研究所 運動器科学研究部門

    • URL

      http://toshinakajima2014.wix.com/tokyomed

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公開日: 2017-01-06  

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