不良なミトコンドリアの蓄積は、ミトコンドリアの機能不全を引き起こし、老化・がん・神経変性疾患・循環器疾患などの原因となり得る。我々はMieapが、ミトコンドリアの構造破壊を伴わないミトコンドリア内へのリソソームタンパク質集積(MALM)を誘導しミトコンドリア内酸化タンパク質を除去するか、細胞内に巨大な液胞様構造物(MIV)を形成し不良なミトコンドリアを丸ごと飲み込んで分解排除するかのいずれかの機能で、ミトコンドリア品質管理に極めて重要な役割を果たしている可能性を発見した。本研究においては、ミトコンドリア内リソソームの存在についての仮説に関して、Mieap WT及びKOマウスの心臓・肝臓・腎尿細管・胃壁細胞などのMieap高発現ミトコンドリア関連臓器・組織や、Mieap WT及びKO大腸がんモデルマウス及び胃がんモデルマウスに発生した腫瘍・正常組織に対して電子顕微鏡による形態学的解析を行った。その結果Mieap KOマウスに対して、WTマウスで有意に認められる形態学的なミトコンドリア内リソソーム様構造物は認められなかった。これらの結果は、これまでのがん細胞株におけるControl細胞株とMieapノックダウン細胞株の電子顕微鏡解析の結果と同様の結果であった。さらにGFP-MieapとMitotracker-redを用いたMALM及びMIVのライブイメージングを試み、生細胞におけるMALM及びMIVの形成過程の可視化に成功した。まずはMieapのMALM 様ミトコンドリア局在を認めた後に、ミトコンドリア領域内からMIVの発生を認めた。このことはMALMとMIVのそれぞれが互いに密接に関係した機能であることを示唆している。以上のことから、Mieapによるミトコンドリア品質管理機構は、これまでのリソソームの機能とは全く異なる生命現象であると考えられる。
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