研究課題/領域番号 |
15K15094
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
平林 哲也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (90345025)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コリン / グリセロホスホコリン / 肝臓 / 神経変性 / メチオニン / ホスファチジルコリン |
研究実績の概要 |
平成27年度は以下の成果が得られた。 ①Cre-loxPシステムを利用して、肝臓特異的、脂肪組織特異的、神経細胞特異的にiPLA2θを欠損するマウスの作製を行った。 ②安定同位体で標識したホスファチジルコリン(PC)を培養細胞に導入し、PCの分解による低分子量化合物の産生を同定・定量する実験系の構築を行った。これにより、細胞レベルでPC分解、コリン産生、メチオニン回路と繋がる代謝フラックス解析を行う体制が整った。 ③コリン補充食やメチル強化食を与えたが、欠損マウスの表現型の劇的な回復は見られなかった。肝臓におけるPC分解と内因性コリンの産生そのものが重要であるか、PCの分解で派生する他の代謝物質も補給する必要がある可能性が考えられた。 ④内因性コリン産生経路においてiPLA2θの上流に位置する酵素を同定し、下流に位置する酵素の候補を2つに絞った。上流酵素の欠損マウスは肝臓においてiPLA2θ欠損マウスと同様にグリセロホスホコリンやコリンの減少が観察されたことから、両酵素が機能的にカップルしていると考えられた。 ⑤iPLA2θの脳は萎縮し、海馬、大脳皮質、視床、線条体などにおいて神経変性が生じており、脳切片を用いた質量分析イメージングにより、iPLA2θ欠損マウスの脳でもPC分解経路の異常やグリセロホスホコリンの減少が生じていることが判明した。iPLA2θは肝臓のみならず、脳の神経細胞の生存においても重要な役割を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた研究のうち、部位特異的欠損マウスの作製は交配不調によりやや遅れているが、平成28年度に予定していた研究計画を繰り上げて行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、下記の事項を重点的に進める。 安定同位体を用いて、iPLA2θを欠損した肝細胞で代謝フラックスの解析を行う。 MRS解析を進め、脳での代謝変化を生存マウスでモニターする。 下流に位置する候補酵素の遺伝子欠損マウスを作製し、肝臓における役割を検討する。 ヒトの疾患との共通性を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
部位特異的欠損マウスの繁殖の遅れにより、次年度分の飼育費用等を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に部位特異的欠損マウスの繁殖を本格的に進めるために使用する予定である。
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